ガッカリした感情は薄れやすい

ある研究では、「ヨーロッパへの旅行」「感謝祭の休暇」「カリフォルニアでの3週間の自転車旅行」という異なる休暇を取った人たちに、休暇前/休暇中/休暇後にアンケートを行い、事前、最中、事後それぞれにおいて、どのような気分かを評価・記述してもらいました。

すると、休暇前は楽しいだろうと期待していた人は、休暇中にガッカリするような出来事があっても、休暇のあとで思い出してもらうと、「いい休暇だった」と評価しました。

バラ色の回顧は、期待と現実との間に不一致が生じても、ガッカリした感情は薄れやすくなるという「情動減衰バイアス」が働くことで起きるとされます。

バラ色の回顧という心理現象が起こるのは、それが人間にとって必要なことだからです。ネガティブな出来事によって生じる感情は、ポジティブな出来事によって生じる感情に比べて薄れやすいことがわかっており、これを「情動減衰バイアス」と言います。

そうしたつらい過去の経験による心の負担を軽減する防衛システムがなければ、イヤな思い出がいつまでも消えずに残ってしまうことになります。まさに、バラ色の回顧はそうした「心の仕組み」によって生じるものなのです。

フロントガラスは割れていたか?

記憶に関する2つめの質問です。

最初に、下のイラストを10秒ほど見てください。

イラスト=ナカオテッペイ

次に、上のイラストを見ずに以下の問いに答えてください。

ガードレールに激突した車は、時速何kmくらいで走っていたと思いますか?

心理学者エリザベス・ロフタスの実験では、参加者に自動車事故の映像を見せたあと、同じように速度に関する質問をしました。

このとき、参加者を複数のグループに分け、「激突した」をさまざまな言葉に換えて質問をしたところ、時速を最も速く見積もったのは、「激突した」という言葉で尋ねられた参加者でした。

その後は「衝突した」「当たった」「ぶつかった」「接触した」の順に、見積もる速度が遅くなっていったのです。

この実験の1週間後、同じ参加者に今度は「フロントガラスは割れていましたか?」と尋ねました。

すると、「割れていた」と答えた率は、1週間前に「ぶつかった」という言葉で尋ねられたグループでは14%だったのに対して、「激突した」という言葉で尋ねられたグループでは32%に上りました。