「昔はよかった」――過去を思い出すときによく耳にする言葉ですが、実際にはその当時はそんなに楽しかったわけではないという実験結果もあります。なぜなら、記憶はそのまま脳に保存されているわけではなく、自分の都合や結果に合わせて書き換えられたり、美化されたりして歪められているからです。記憶に関する3つの質問から、あなたの思考の偏りが見えてきます――。

※本稿は、『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

あなたの記憶はバイアスだらけ

あなたは記憶力がいいほうでしょうか? それとも物覚えが悪いほうでしょうか?

なかには、細かなことまでよく覚えているという人もいるかもしれませんが、どんなに記憶力に自信があっても、すべての事実を正確に覚えている人はいないでしょう。というのも、記憶にはさまざまな「認知バイアス」が潜んでいるからです。

認知バイアスというのは、誰もが無意識のうちに囚われている思い込みや直感、経験、先入観、願望といった思考の偏りのことです。認知バイアスに縛られた結果、われわれは知らず知らずのうちに合理的でない選択や判断を下してまい、「あのとき、他の方法を選べばよかった」「なぜ判断を間違えてしまったのか」と後悔したりします。

認知バイアスは日常生活のあらゆる場面に潜んでいて、科学的に実証されているものは200種類以上あるとされます。記憶や選択、信念、因果、真偽などに関連する場合に認知バイアスは生じやすいのですが、なかでも誰もが陥っているのが、記憶に関するバイアスです。

じつは記憶というのは、自分の都合や結果に合わせて書き換えたり、過去を美化したりなど、さまざまなバイアスによって歪められています。

本稿では、そんな記憶に関する認知バイアスを、心理実験にちなんだ3つの質問からひも解きます。

日本の若い女性のいくつかのシーン
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

バラ色の眼鏡で過去を見ている?

最初の質問です。

あなたは学生時代と、社会人になった現在の自分の姿、どちらの状況を幸せに感じるでしょうか?

出典=『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』
イラスト=ナカオテッペイ

この問いに対して、「学生時代のほうが幸せ」と考えた人が多いのではないでしょうか?

英語に「バラ色の眼鏡を通して見る(look at ~through rose-colored glasses)」という表現があります。

「昔はよかった」と感じるのは、まさにバラ色の眼鏡を通して過去を見ているようなもの。そのように過去を美化するバイアスは「バラ色の回顧」と呼ばれています。

過ぎ去った時代を懐かしむ「ノスタルジア」も、部分的にはこの認知バイアスによるものと考えられています。