なぜ1950年代以前は花粉症患者がほぼゼロだったのか。腸内細菌学者の小柳津広志・東大名誉教授は「アレルギーは抗生物質が腸内フローラを攪乱することで起こると考えられている。1950年以降に生まれた、ほぼすべての人は抗生物質を処方されているため、運が悪いと花粉症になってしまう」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、小柳津広志『東大の微生物博士が教える 花粉症は1日で治る!』(自由国民社)の一部を再編集したものです。

スギ花粉が飛散するイメージ
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花粉症になる、ならないを決める「免疫寛容」

花粉症はI型アレルギーであることを連載1回目でお伝えしましたが、II型、III型、IV型を含めてすべてのアレルギーで、あらゆるものがアレルギーを起こします。

「あらゆるものがアレルギーを起こす」と言うと混乱されるかもしれませんが、アレルギーの原因物質であるアレルゲンが肌の傷から侵入したとしても、簡単にはアレルギーは起こりません。アレルギーの原因物質が肌の傷から体に入っても、これが日常的に食べているものならアレルギーは起こらないのです。

私たちは毎日食べ物を口から摂り、消化管で分解・吸収して残りを肛門から排出します。消化管の粘膜ではすべてのものにアレルギーを起こさないようになっており、この仕組みは、免疫寛容と呼ばれています。消化管で食べ物がアレルゲンとして作用したら、私たちは何も食べられなくなってしまいます。

ここまでお読みいただいたみなさんは、おそらく「免疫寛容は、Tレグ細胞の機能」だとお解りになると思います。

Tレグ細胞は私たちの体にとって、非常に重要な細胞なのです。口に入れたものがアレルギーを起こさないという免疫寛容は、当たり前であると本書を読まれているみなさんは簡単に理解されると思いますが、なんと、医学界では2015年まで、「アレルギーを治すには原因食品を食べさせない」という認識が当たり前だったのです。

マスク、ゴーグルをしてもよくならない

みなさんの中にも、「そばアレルギーの子どもにはそばを食べさせない」とつい最近まで信じていたり、また、いまでもそのように信じている人もいるかと思います。

ところが、2015年2月に米国のヒューストンで開かれたアメリカアレルギー学会でギデオン・ラック博士が「子どものピーナッツアレルギーを予防するにはピーナッツを小さい時から食べさせるほうがよい」と報告したのです。この発表によって、「アレルギーを治すには原因食品を食べさせる」に変わりました。

この報告は、食べているものにはアレルギーができない。つまり、食べているものには免疫寛容が起こるということを意味しています。言い換えれば、花粉症だからといって、マスクやゴーグルをして花粉を避けていても花粉症はよくなりません。極端なことを言うと、毎日、少しずつ花粉を食べればよいのです。