1950年代以前、花粉症の人はほぼゼロだった

「花粉症はアレルギー体質の人がなる」と言う人がたくさんいます。

しかし、これは、間違いです。なぜなら、すべてのアレルギーは1950年代に抗生物質が使われるようになる前は、ほとんどなかったからです。

鼻をかむ人のイメージ
写真=iStock.com/west
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「アレルギー体質だから花粉症になる」のであれば、1950年以前はアレルギー体質の人がいなかったことになります。遺伝的体質であれば、当然、1950年以前にもいたはずです。

アレルギーは抗生物質が腸内フローラを攪乱したことで、起こるのです。1950年以降に生まれた、ほぼすべての人は抗生物質を処方されています。「アレルギー体質」になった人は、たまたま運が悪かっただけなのです。

アレルギー体質とは何か

ここで、ヘルパーT細胞の説明をしたいと思います。

連載2回目でお話ししましたが、T細胞は免疫の司令塔で、何を攻撃するかを決める細胞です。ヘルパーT細胞にはいろいろありますが、花粉症に関係するのはTh1細胞とTh2細胞なのです。

Th1細胞はウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃する司令官で、Th1が行う免疫は細胞性免疫と呼ばれています。

Th2はB細胞にIgG抗体を作らせて侵入した細菌を攻撃する司令官です。Th2はTh1が少ないとB細胞にIgE抗体を作らせてしまいます。これがI型アレルギーを起こします。

Th2が多くTh1が少ない人がいますが、このような人が「アレルギー体質」と呼ばれます。Th1とTh2がバランスよく存在すると、I型アレルギーは起こりません。Tレグ細胞はTh1とTh2のバランスをとります。つまり、Tレグ細胞が免疫寛容を行うのです。

Tレグ細胞は大腸で増え、酪酸菌が作る酪酸がTレグ細胞を増やします。ですから、抗生物質で腸内フローラが攪乱されても、フラクトオリゴ糖などの食物繊維をたくさん食べてTレグ細胞を増やせば、アレルギーは発症しないのです。

花粉症予防は認知症予防でもある

花粉症の人はTレグ細胞が少なくなっています。高齢者ですでに脳の神経細胞にアミロイドβが蓄積してしまった人では、Tレグ細胞が少ないと脳の免疫細胞のミクログリアが神経細胞を攻撃するようになります。

これがアルツハイマー病の最終段階です。ミクログリアが神経細胞を破壊すると知性、記憶、感情などを失います。

しかしながら、フラクトオリゴ糖などの食物繊維をたくさん食べてTレグ細胞を増やしておけば、ミクログリアの攻撃を抑えることができるのです。つまり、花粉症を治せば、アルツハイマー病も予防できるということを意味しています。

花粉症を抑えれば長生きできる

腸内フローラの研究で有名な辨野義己博士は、著書『100歳まで元気な人は何を食べているか?』(三笠書房)の中で、「100歳まで元気で長生きしている人の便は酪酸菌を大量に含んでいる」と書いています。

辨野博士は非常に多くの健康な百寿者の便を日本全国から集め、腸内フローラの分析をしました。百寿者はすべて、大腸の酪酸菌が多く、全身の炎症が抑えられているようです。