「家事やお店の予約など面倒なことをやるのは、いつも自分ばかり……」。そのように思った経験は誰にでもあるでしょう。人は何かをしたときに、相手の貢献度よりも自分の貢献度を高く見積もってしまう傾向があります。こうした自己中心的な認知のゆがみは人間関係を壊す原因になったりするので、注意する必要があります――。

※本稿は、『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

自分に都合よく解釈してしまう認知バイアス

日常生活の中では、誰もが無意識のうちに直感や経験、先入観、願望などに囚われています。その結果、合理的でない選択や判断を下していたりします。

心理学ではこれを「認知バイアス」と言い、こうした思い込みや思考の偏りに誰もが縛られているのです。

認知バイアスは日常生活のあらゆる場面に潜んでいて、科学的に実証されているものは200種類以上あるとも言われています。

記憶や選択、信念、因果、真偽などに関連する場合に認知バイアスは生じやすいのですが、非合理的な判断をしてしまった結果、「あのとき、他の方法を選べばよかった」「なぜ判断を間違えてしまったのか」と後悔することもあります。

認知バイアスで陥りがちな失敗の一つに、自分の貢献度を過大評価してしまうというバイアスがあります。自分が持っている情報や知識を基準にして、他者のことを推測してしまう傾向があります。

本稿では、自分の貢献度の評価に関する認知バイアスを紹介します。

お互いに「自分の貢献度」を過大評価

パートナーや、仲のいい友だちとの普段の関係を思い出してみてください。2人でやらなければいけない作業があったとき、それに対するあなたの貢献度は何%くらいでしょうか?

同じ質問をパートナー(または友だち)にも答えてもらうと、おもしろい結果が出てきます。

ある実験では、夫婦で実験に参加してもらい、「朝食の準備」「子どもの世話」などについて自分の貢献度をパーセンテージで答えてもらいました。

夫婦それぞれが自分の貢献度を正確に評価していれば、貢献度の答えの合計値は100%になるはずです。しかし実際には、多くの合計値が100%を超えました。つまり、少なくとも一方が、自分の貢献度を高く見積もっていたのです。

なお、「口論の開始」などのよくない出来事についても、よい出来事に比べると効果は弱いものの、自分の責任を重く見積もっていました。

リビングでけんかをする夫婦
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