「宿」ではなく「仕事をする場」に変えるべき
もちろん、こうした危機対応のための拠点として議員宿舎のあり方を見直していくことは重要だが、それだけではない。単なる「宿」ではなく、仕事場としてもっと活用してもらう工夫がいるのではないか。逆に言えば、明治以来続いてきた国会議員の仕事の仕方を大きく変える時期に来ている。
例えば、議員宿舎には来客をもてなすための設備がほとんどない。会議室はあって、官僚や外部有識者との打ち合わせなどに使う議員もごく一部いるが、ほとんど稼働していない。レストランがあるわけでもなく、コーヒーなどを出すにも秘書をコンビニに買いに行かせるありさまだ。外国からの客と食事をしようと思えば、ホテルを利用するほかなくなる。
首相が銀座の高級店に外国人首脳を連れていくことが話題になるが、国賓や公賓などのオフィシャルな晩餐会などは迎賓館で行うものの、それ以外の場合に使える「場所」がないのだ。
特に政府の役職に就いていない国会議員の場合、パワーブレックファストを持とうと思えば、民間のホテルしかない。議員宿舎をそういった「仕事をする場」に変えていくべきではないのか。個人の「家」ではなく「職場」だということになれば、家賃を払わなくても国民は怒らないだろう。
議員会館は2012年の建て替えで広くなった
昼間の「職場」である国会議員会館は、国会に隣接して3棟が立つが、2012年に建て替えられてがぜん「仕事場」らしくなった。それ以前の議員会館は小さな議員室の手前に秘書の机が置かれた狭いもので、来客が多い議員の場合、廊下に丸椅子を出して並んで待ったものだ。これも、国会議員は東京に出てきて国会に出るのが仕事だから、大きな執務室は不要だ、と考えられてきたのかもしれない。
今では議員室と応接室、秘書が仕事をする部屋と3室があるかなり大きなスペースになった。ようやく「仕事場」らしくなった、と言える。
国会議員の場合、秘書が3人公費で付けられる。政策秘書、第一秘書、第二秘書と呼ばれ、国家公務員として国から給与が支給される。国会議員に優秀な秘書、とくに政策づくりに関与する「政策秘書」を置くことで、国会議員がより政策づくりに深く関与できるようにしようという考えだ。