真価は「年上のマネジメント」で決まる
チームメンバーのプライドを守るということは、「年上のメンバー」のマネジメントをしなければならない時には、さらに重要になります。
場合によっては、かつての上司が自分の下の立場になることもあります。私の長年いた外資系の業界では、年齢、性別、国籍などで人を区別することは差別につながりますので、年齢差を意識する必要はほとんどなかったのですが、日本の企業の場合は、新人一括採用で、同期が一つの単位になり、かつ、最近まではかなり年功序列が貫かれていたところも多いと思います。
本来、マネジャーやリーダーというのは、皆をマネージする、あるいは、リードするという役割を与えられたというだけのことで、すべての仕事能力においてマネジャーがメンバーより優れているわけではないですし、そうである必要もありません。
ところが、年功序列型で、長幼の序の文化を抱える日本の企業の環境では、そうはいきません。ポジションの高さは、能力の高さであり、組織内でのパワーであると捉えられます。上司は「偉い」人だと認識されるわけです。
そこで、年齢上の逆転が起きるということは、下の立場に立たされた人にとっては大いにプライドが傷つくわけです。
年上のメンバーのプライドは「3段階で守る」
本来、マネジャーの能力以上に高い専門能力を持っている人ならば、その能力を生かしてもらうほうが、当人にも、会社にもプラスであるはずです。しかし、プライドが傷つき、前向きに働けない。そんな人が日本にはたくさんいるのではないでしょうか。大変、もったいないことです。
今後、定年の実質延長が行われます。その意味でも、専門能力に長け、経験も積んだポテンシャルの高い年上のメンバーを使いこなし、そのフルポテンシャルを発揮してもらう必要は、以前にも増して高まっています。
私が意識しているのは、三つのポイントです。
最初は、日本文化の「長幼の序という社会的ルールを尊重する」ことです。仕事の場でも、プライベートなつき合いの場でも、年長者としての敬意を払うことは当然です。部屋に入る時、席に着く時、エレベーターに乗る時など、当たり前の常識的なレベルでの年長者を尊重する姿勢は貫徹させます。
その上で、二つ目は、その年上のメンバーの得意分野を見つけて、その得意分野で活躍してもらうよう仕事の割り振りを考えること。その分野の「プロとしてのプライド」を持って仕事をしてもらい、成果を出してもらいます。そして、そのことへの期待をはっきり伝えます。
三つ目は、「後進の育成」に携わってもらうことです。
私も大学教授として後進の育成がいまの仕事ですが、学生から「先生」と呼んでもらえた時の喜びはひとしおで、それが、自分のプライドをさらに促進させ、後進に恩返ししなければいけないという気持ちが強くなると実感しています。育成に携わると、モチベーションは非常に高くなります。
ただでさえ傷ついているプライドを傷つけず(長幼の序の尊重)、プライドを取り戻してもらい(プロとしてのプライド)、その上で新たなプライドを獲得してもらう(後進の育成)。この3段階が重要なのです。