1人1人が経営者の視点を持て! と言われても無理

会社という組織の中で、自分が関わるすべての案件を、自分が考えているように通すためには、気の遠くなるようなパワーが必要になります。したがって、これだけはどうしても実現したいという案件以外については、大勢が決定するまで待つのはやむを得ないでしょう。社内の偉い人は、「1人1人が経営者の視点を持て!」などと聞こえのよいことを言いますが、いくら経営者の視点を持っても、それに見合う権限が与えられていないわけですから、そんなこと無理に決まっています。第一、それほど給料はもらっていません。

必然的に、仕事において「自分のやりたいこと」を考える、ということは次第に遠ざかっていきますし、仕事以外のことでも、「自分のやりたいこと」を明確に意識するという習慣はだんだんなくなっていきます。

かくしてサラリーマン脳に侵された結果、「やりたいことをやれ、と言われても、何をやっていいかわからない」ということになるのです。

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50歳前後からは「サラリーマン脳」を排除せよ

それでも、会社にいる間は「サラリーマン脳」で何の問題もありません。いや、むしろサラリーマン脳でなければ、余計な摩擦と労力を費やすことになるかもしれません。

でも、定年が視野に入ってきた50歳前後からは、できるだけ頭の構造を変えて、サラリーマン脳は排除するように努めるべきだと思います。

現代では、得体の知れない「老後不安」というナラティブ(物語)に誰もが影響を受けています。その結果、そればかりに気を遣い、ひたすらお金を貯めていく一方で、自分のやりたいことが何かもわからないまま、定年を迎えることになります。

そうなると、お金はあったとしても、それを使って充実した楽しい老後を過ごすことができない、という事態になってしまうからです。

そして、そんな事態のまま、人生の最後を迎えた時に何千万円あったとしても、それはまったく意味がありません。そのお金をそれまでに自分のやりたいことに使っていれば、あるいは欲しいものを手に入れていれば、どれぐらい充実した人生が送れたことでしょう。死ぬ間際になって、「これだけのお金を、もっとやりたいことに使っていれば」という後悔はしたくありません。

「やりたいことがわからない」などという悲しいことを言っている場合ではありません。今からでも遅くないので、サラリーマン脳を捨て去り、自分のやりたいことを探すべきだと思います。