水商売に従事する女性の約2割はシングルマザー

水商売で働く女性は、特殊な事情を抱えている……、こうしたイメージを持たれることが多い。

それは、テレビなどのドキュメンタリーやバラエティ、ノンフィクション小説、雑誌などにおいて、とりわけ厳しい環境で育った方々にだけスポットをあてて取材しているからだ。

実際には、必ずしもそういうことばかりではない。

とはいえ、「ワケあり」の方々も一定数存在する。中でも、離婚女性やシングルマザーが困窮してやむを得ず水商売の世界に足を踏み入れるというケース。

ただでさえ男女の収入の差がある日本において、専業主婦だった女性が再び会社員として社会復帰するハードルは極めて高い。自立した生活を送るために、とりあえずの仕事場として、業界で働き始める方は非常に多い。

まして、それがシングルマザーである場合、事態はより深刻になる。日本において、別れた元夫から養育費をきちんと受け取れている女性は全体の2割にも満たないというデータがある。

写真=iStock.com/Yagi-Studio
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そのため働ける時間は短い、時間帯は限られるなどの制約が多いなか、養育費を捻出するために、より多くの収入を早急に得る必要がある。

実際、水商売に従事する約2割の女性はシングルマザーであるともいわれている。

また、昼間の仕事の収入だけでは生活費が足りず、水商売の仕事を兼業している方や、起業したものの売上が立たず、収入の補填として夜働く方もいる。

学費を稼ぐため、奨学金を返すため、あるいは一人暮らしの生活費を稼ぐためなど、学業と両立させながら働いている方、他にも一般企業への就職が困難である層――たとえば、外国人労働者や、低学歴層、トランスジェンダーといった方々が水商売の仕事に就くことも多い。

コロナ禍においては、昼間の仕事を解雇される、または職場の休業要請によって収入がなくなり、水商売で生計を立てるようになったという話も多く聞く。

こうした状況も鑑み、水商売の業界で働くことが決して特殊なことではなく、職業の1つとして、先入観なく認識される社会になることを願ってやまない。

水商売が日本経済の起爆剤になるために

私は、水商売には、日本の経済を活性化する起爆剤となり得るポテンシャルが秘められていると考えている。

甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)

水商売は女性が活躍しやすい業界の1つでもある。

前述のように、収入は必要だが、昼の時間帯に働けない、あるいはなかなか採用されない方や、昼の仕事だけでは生活費が賄えない方などのセーフティネット的な役割も果たしている。

さらに、日本は古くから特有の「花街文化」を形成してきた歴史がある。この花街文化は「粋」という言葉で表現され、ユーモアや思いやり、奥ゆかしさを持つ日本特有の文化であり、日本の誇りでもある。

水商売が日本経済の起爆剤となり、女性活躍の場になっていくためには、我々が社会に認めてもらえるような、責任のある行動を徹底することが求められる。これを通じて、水商売の社会的地位の向上を目指していかなくてはならない。

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