お客様も水商売業界の一員

そしてもちろん、「顧客」――お客様がいなければ商売として成り立たない。

前述のとおり、水商売業界の市場規模は二兆円を超えるとされる。巨大な消費活動を担う、ある意味では水商売業界の主役だ。

お客様は大切な存在であるが、神様ではない。もてなす側として「こんなお客様になってほしい」「こんなお客様になったら楽しめる」という方法を伝えていきたい。

・働く女性に対して、敬意をもって接していただくこと
・店内では他のお客様へご配慮いただくこと
・全力で経済を回していただくこと

たとえば、「大金を使えばモテる」。

これは誤った認識だ。確かに、店やキャストから気を遣われることは間違いないが、モテるということとは別なのだ。

「お客様は自分の鏡」とは、キャスト側の視点からよく言われることだが、逆もしかり。

いくらお金をたくさん使っていただいたとしても、お客様自身が意地の悪い態度でいると、寄ってくるキャストは裏表のある意地の悪いキャストばかりになる。

お客様が下心丸出しで接すれば、キャストもお金という下心丸出しで接客をしてくるようになる。

褒められて嬉しいのは「内面」や「気遣い」

では、どうすればいいのか。キャストには「一人の人」として接してほしいと思う。

「飲み屋のねーちゃん」というスタンスで、名前も覚えない対応をされているキャストは、心底悲しい思いをしている。

女なら誰でも良く、数合わせの一人として見られていると感じるからである。

若い女性がテーブルに座って前を覗いている
写真=iStock.com/Masaru123
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したがって、このような横柄な態度のお客様の接客はないがしろになってしまう。

これでは、せっかくの楽しい飲みの場が気持ちの良い場になりにくいのではないだろうか。キャストである前に、一人の人間として敬意をもって接してほしい。

また、「キャストをおだてればモテる」と思っている方もいる。これも間違いだ。男性と違い、初対面で何かを褒められても、本気で喜ぶキャストはほとんどいない。

「君、かわいいね」。新人でない限り、キャストはこのような言葉を真に受けはしない。

日頃から言われ慣れているため、挨拶代わりにしか思えないし、自分に言っているということはその他――たとえば50人くらいには同じことを言っているだろう、と捉える人がほとんどだからだ。

捉える、というよりは、実際言っているのではないだろうか。

褒められて嬉しいのは、内面や、気遣いを褒められたときではないかと思う。

接客にも、費用対効果が存在する。キャストが店外で長時間付き合ってくれたのだとしたら、店内でキャストの売上になるような抜きもの(シャンパーニュやワインなど)を入れるべきだし、お客様の単価が高くなったときには、キャストはアフターサービスを積極的にするべきだと思う。

このことに明確なルールがあるわけではないが、お互いへの気遣いができ、暗黙の了解が通じ合っている者同士であるほど、より良い関係性が築けるのではないだろうか。