水商売とは何で、どんな業態があるか。日本水商売協会代表理事の甲賀香織さんは「水商売は接待を伴う飲食店の総称で、性風俗店やギャラ飲みとは異なる。その実態は案外クリーンで、従事する人の多くは、真面目に、一生懸命に仕事に取り組んでいる」という――。

※本稿は、甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

高級ホステスクラブやホステスバーが集まる夜景
写真=iStock.com/Free art director
※写真はイメージです

悪気なく別物扱いされてきた「水商売」の歴史

水商売はこれまでも長い間、虐げられてきた歴史を持つ。その事実は、業界の内側にいなければ、わからない。なぜならば、業界の外側にいる方々は、悪気なく水商売を「別物扱い」し続けてきたからである。

業界内の人間は、この「別物扱い」の風潮を、「業界あるある」であり「どうすることもできない仕方のないこと」として受け入れてきた。特に理由もなく理不尽な対応をされたとしても、それは業界内の人間にとっては「よくあること」だったのである。

だからこそ、水商売の経営者たちはそれを気に掛けることも、声を上げることもなく、ある意味では自立して、粛々と経営を続けてきた。

ところが、状況は大きく変化した。新型コロナウイルス感染症が広まったことで、理不尽が理不尽のままでは、死活問題になる環境となったのである。

水商売の業界関係者は、このコロナ禍によって初めて、自分たちの置かれてきた「不公平」な真実と向き合わざるを得なくなった。

本稿では、「別物扱い」され「不公平」な扱いを受けてきた、現在の水商売業界全体を概観していく。