従事者は100万人、市場は2兆円規模

「水商売」という言葉、あるいはそれが示す業界に、とても良いイメージ、クリーンな印象を持つ方は少ないかもしれない。

しかし、いわゆる「水商売」、ナイトビジネスを展開している経営者や、そこに従事する人の多くは、真面目に、一生懸命に仕事に取り組んでいる。

私自身は、一般企業よりも常に目をつけられているこの業界のほうが、案外クリーンなのではないかと思っている。

接待飲食業界の従事者は、100万人いるといわれている。警察庁によれば2019年末、接待飲食等営業の許可数は6万3466件だった。

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の20年1月度のデータでは、コンビニの店舗数は5万5581店なので、コンビニよりも多いことになる。市場規模では2兆4594億円はくだらないという説もある(2018年度、日本フードサービス協会)。

それだけ多くの人間が従事し、多くのお金が動くにもかかわらず、さまざまな問題や課題が手つかずのまま残ってしまっている。しかし、「水商売だから」「夜の街だから」とひとくくりにしてしまっては、その問題・課題を解決に導いていくことも難しい。

その内実を明らかにし、問題を切り分けていくことで、業界のみならず社会全体の長年の課題・問題も解決することにつながるのである。

接待を伴う飲食店の総称

まず、「水商売」とは何か。

「水商売」を国語辞典で調べると、次のような説明がある。

料理屋・待合・酒場・バーなど、客に遊興させるのを目的とし、客の人気によって収入が動く、盛衰の激しい商売。水稼業みずかぎょう。(小学館『大辞泉』)

別の辞書の解説も見てみよう。

水を扱うあきない。水あきない。

客のひいきによって成り立つ盛衰の激しい商売。主として、待合・貸座敷・料理店・バー・キャバレーなどにいう。水稼業。(小学館『精選版日本国語大辞典』)

辞書の解説からいえば、水商売とは「客商売であり、客の人気・ひいきによって売上や人気が左右される商売」ということになる。そういう意味では、例にも挙がっているとおり、飲食店全般が「水商売」ということになる。

ただし、日本水商売協会の「水商売」の定義は、辞書とは少し違う。

我々は、「水商売」を「接待を伴う飲食店(以降、接待飲食店と呼ぶ)」の総称として使っている。正確には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」中の、風俗営業接待飲食等営業1号営業に該当する店舗を示している。

先に説明したとおり、「水商売」は本来、飲食店も含むものである。

しかし、大手レストランチェーンや居酒屋などの外食産業は東証一部に上場するといった躍進を遂げ、社会的にもネガティブなイメージはほとんどなくなった。

そして、取り残されたのは接待飲食店である。現代ではこれらが「水商売」の主たる産業として認知されている。

これらの店舗は、風営法に基づき都道府県公安委員会に営業許可を得て活動しているが、時に「公序良俗に反する」とされたり、差別的取扱いを受けたりすることがある。

ただ、特に30代以下の若い方々には、「水商売」という言葉の成り立ちや、かつて差別的な意味合いで使われていたことは知られておらず、「業界を示す用語」として使用されている実態がある。