修行僧が出家し、規律の中に生きる理由

道元禅師は、僧侶が真に僧侶たり得る存在であるかどうかを左右するのが、この「行持」であると考えました。なぜなら、心に思うことが言葉にあらわれ、行動につながっていくからです。だからこそ、一つひとつの「行持」を徹底的に見つめて、丁寧に真剣に行じていきなさいというのが道元禅師の教えだったのです。

大愚元勝『これでは、不幸まっしぐら 今すぐ変えたい30の思考・行動』(佼成出版社)

修行僧がなぜ出家をするかといえば、これまで身につけてきた世俗的な考え方やなにげない悪い習慣を変えるためにあります。朝は早く起き、食事の時間から掃除、洗濯などあらゆる行ないを決まった型のなかで、しかも集団で実践していく。ここに自分の悪い習慣を入れ込む余地はありませんし、自分を変えようという意志すら必要なく、いやおうなしに新しい習慣を植え付けられることになるのです。

仏道だけでなく、武道でもスポーツの世界でも、あるいはビジネスの世界でもそうですが、超人的な習慣力をもっている人の多くが、そうなりたいという願いをもって環境を変えているのです。自分の意志だけでは変えられない弱さを知っているがゆえに、強くなりたいボクサーはジムに入会します。強くなりたい空手家は、よい師のいる道場に入門します。彼らに強い意志があれば、ジムにも道場にも行く必要はなかったはずなのです。

悪い習慣を見つめ、崩せる環境に身を置く

実家で暮らしていて、家族に甘えてしまう習慣を変えたい人は、「一人暮らし」をすることもいいでしょう。自宅では勉強に集中することができない人は、学びたいことに精通した先生を探し、その人のもとへ学びに行くことでもいいかもしれません。朝早く起きることを習慣づけたい人は、朝活に参加して、「起きて行かざるを得ない状況」を作り出すことも大事だと言えるのです。

もしも、物事がうまくいっていないと感じている人は、自分の日々の習慣がそもそも「うまくいかない習慣」になっているのだと思う必要があります。まずは自分を苦しめている悪習慣が何なのかを見つめる。そして、これまで自分が身につけてきた小さな悪習慣である「行持」を、ぜひ崩せる環境に身を置いてみてください。

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