「変わらないといけない。でも、できない」

もう一つ、変われない人がもつ原因があります。それは、「本気で変わりたいと思っていない」ということです。つまり、変わる覚悟がない。「どこかにある『方法論』が、ダメな自分を変えてくれるのではないか」という甘えが背景にあります。

そもそも本気で変わりたいと思っていない人は、その時点で自らを変えることは困難でしょう。しかし、たとえ意志があったとしても、自分の意志によって変えられると信じ、やみくもに挑戦しては失敗を繰り返すだけです。すると、次第に人間は自信を失っていきます。「自分はなんて意志が弱い人間なんだ」「一生、この怠惰な性格は直らないのかもしれない」「自分は、できる人とは違う人間で、いつまでも成功することはできないんだ」と卑屈になっていくのです。

座ってうなだれる人のシルエット
写真=iStock.com/kumikomini
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今度は、挑戦すること自体をやめてしまうことになります。かといって、完全に諦めることもできず、心はよくない習慣をもっている自分自身を受け入れられないため、「このままではダメだ。変わらないといけない。でも、できない」という強烈なストレスに身をさらし続けることになります。

環境を変えて、よき習慣に上書きする

たとえば、夜眠りにつくことができず、朝も早く起きられない。学校や仕事にも遅刻する癖がついてしまい、早く悪習慣を変えなければ社会的な信用も失いかねない深刻な悩みの場合もあります。これは心身に多大なストレスを与え、状況をより悪い方向へ向かわせることにもなりかねません。

では自分の意志で変えられない習慣をどう変えたらいいのか。それは、環境を変えることです。環境を変えるのが有効なのは、いままでの習慣が崩れることにあります。何も考えずに過ごしてきた習慣を、新しいよき習慣に上書きしていくチャンスがそこに生まれるのです。

道元禅師の教えに「行持ぎょうじ」があります。これは、禅僧にとってはとても大切な教えであり、この行持がすべてといっていいほど欠かせないものです。行持とは、わかりやすくいえば、日々の自分の習慣のことです。話す言葉の習慣、心に何かを思う習慣、何かをする習慣など、すべての行ないや活動を示します。