「神社」と「お寺」はそもそも何が違うのか

困りごとがあると、人は神頼みをします。しかし、神社に足を運ぶのは初詣だけという人が多いのではないでしょうか。神社とはどのような場所かを正確に説明できる人も少ないような気がします。

神社で参拝する人たち
写真=iStock.com/JGalione
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日本の伝統的な宗教施設としては、神社のほかに仏教寺院があります。神社にお参りするのと同様、お寺にお参りをされる方もいます。お寺は本来的には人が仏教の教えに触れるところであり、お坊さんが修行をする場です。

これに対して神社は、第一義的には神様が鎮座する神聖な場所です。神司をはじめとする神職の方々は、そこにいらっしゃる神様に奉仕することが第一の仕事ということになります。ですから神社に参拝することは、神様が住んでいる宮殿にお邪魔して、そこで神様に感謝したりお願いしたりすることなのだ、というイメージを持ってほしいのです。

神社は霊威社、氏神神社、産土神社に分かれる

神社はその性質によって、いくつかの種類に分けられます。特に著しい霊験があるとされ、広く信仰されているのが霊威社(霊威神社)です。八幡宮や天満宮、稲荷神社、厳島神社、諏訪神社など、各地に分社を持つ神社がこれにあたります。八幡宮は武運、天満宮は学問成就、稲荷神社は商売繁盛など、それぞれ特有の御神徳──仏教でいう「ご利益」に近い概念──で信仰を集め、発展してきました。

【図表】神社は3つのグループに分かれる

そして、もともと特定の氏族が自らの祖先や守り神を祀る神社だったのが、「氏神様」とも呼ばれる氏神神社です。一方、特定の地域を守る産土神うぶすながみを祀るのが産土神社です。氏神信仰は中世以降薄れて、産土神のことを「氏神様」と呼ぶようになり、「氏子」も神様の子孫ではなく、その神様が治める地域に住んでいる人々ということになっていきました。氏神様の概念が、当初の血縁的なものから地縁的なものへと変化したのです。それとともに、かつては特定の氏族しかお参りしなかった神社が、一般庶民にも広く開かれた存在になっていきました。

そもそも神道そのものが、大らかな信仰でした。開祖や聖典や教義を持たず、各地の神話や皇室の伝承、自然への畏敬などが組み合わさって成立した、柔軟で奥の深い宗教です。日本人は代々、そうした神道の理想とする価値観を、神社にお参りし、祭りに参加することで体験的に身につけてきたわけです。