戦争は渡辺に何をもたらしたのか

戦争に突き進んだ戦前の日本、政治家や官僚がそれに迎合し、戦争に突き進んだ戦前の日本。渡辺は政治の過ちが、個人や国家の命運を大きく変えてしまうことを痛感したという。戦争体験は自身に何をもたらしたのか、渡辺に問うた。

――戦争の体験というのは、間違いなくその後の人生に決定的な影響を及ぼしたと言っていいですか。原体験と言うのはやはり非常に大きなものでしたか。

「それはね、軍の横暴、独裁政治の悪さを、身にしみてわかったわけだ」

安井浩一郎『独占告白 渡辺恒雄 戦後政治はこうして作られた』(新潮社)

――大変失礼なことを承知で申し上げるんですけども、渡辺さんの存在は、権力と言うものと密接不可分だと実は思っていたんです。だけど今のお話を聞くと、戦争と言うものに対する反発心、反骨心が非常に強い。非常にアンビバレントな思いをして聞いていたんですが。

「あれだけ人を殺して、何百万人も殺して、日本中を廃墟にした連中の責任を問わなくて、いい政治ができるわけない」

――戦後、言論人としての渡辺さんのさまざまな主張の根本には、戦争を繰り返してはいけないという思いがあったのでしょうか。

「もちろん、もちろん。だって戦争中から反戦だったんだから、僕は。絶望的な時代だから、一生に、一度、あれを味わったらね、何も怖いものないね。今のこの世の中で」

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