「永遠に有料」と言わないのは、課税を避けるため

言うまでもなく道路は公共財であり、誰もが無料で利用できることが原則である。高速道路も例外ではなく、建設費を返還した後は無料となる。もっと言えば返済後に無料となることを前提に課税も免除されている。

今回、返済期限を65年まで延長したことは事実上、永遠に有料化が続くと見られているにもかかわらず、国土交通省は「無料化の旗」を降ろしていないのは、この課税を回避するためである。高速道路は未来永劫「有料」と言った瞬間に課税されるのだ。その額は年間5000億円規模となると試算される。

繰り返しになるが高速道路は14年に法改正され、有料期間が15年間延長された。背景には12年に中央自動車道笹子トンネル崩落事故が起こり、老朽化したトンネル、橋、道路といった公共財の老朽化がクローズアップしたことがある。この事故を境に、高速道路は有料期限の延長を繰り返すことになる。

「高速道路各社は延長で生じた財源をもとに更新事業を積極的に進めている。今回の50年延長は一里塚に過ぎない。各社は第2・第3弾の更新計画と債務返済計画を作り、さらなる有料期間の延長を目指している」(野党幹部)という。

有料期間の延長は、国費投入を避けながら高速道路の老朽化対策を講じる「打ち出の小槌」であり、同時に「日本高速道路保有・債務返済機構」という国土交通省の天領を残す、願ったりかなったりの施策と言っていい。日本の財政難を回避する有効な手段というわけだ。

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防衛費の財源をめぐっても「返済延長」の動きが

債務返済を先延ばしにする動きは、高速道路だけにとどまらない。岸田政権が打ち出した防衛費増額をめぐっては、財源として国債の償還期間を延長し、毎年の返済額を減らして財源に充てる案が自民党内で浮上している。政府の借金である国債の「60年償還ルール」を見直そうというのだ。

「60年償還ルール」とは、端的に言えば「国債を60年かけて返す」という仕組みだ。例えば償還期間10年の国債を600億円発行した場合、10年後に一般会計から国債返済のため100億円を特別会計へ繰り入れて返済し、残り500億円は借換債(借金を返すために発行する国債)を発行する。そして次の10年でまた100億円を一般会計から特別会計に繰り入れて返済し、残る400億円分の借換債を発行する。これを繰り返して60年後に完済する仕組みだ。

その際、毎年度、一般会計から繰り入れられる金額は、国債発行残高の約60分の1(1.6%)に相当する額と法律で定められている。

60年で完済すると決められた理由は、当初「60年ルール」は公共事業に投資する建設国債のみに適用されていたためだ。道路や橋などの平均耐用年数が50~60年程度ということから「60年で完済」となった経緯がある。まさに今回、50年延長された高速道路の無料化と重なるルールである。