「高速道路無料化」は事実上消滅した
国土交通省は今通常国会に、高速道路料金の無料化開始時期を50年延長し、2115年からとする道路整備特別措置法を提出する方針だ。全国の高速道路は建設費などの借金を料金収入によって返済することになっており、現在、2065年まで料金を徴収すれば借金を完済して、以降、無料化できると定めている。
しかし、国交省の有識者会議では、高速道路の老朽化が進み、その維持・更新に伴う費用が確保されていないとの理由から、料金徴収期間を半永久的に延長することを求めていた。「高度成長期に急ごしらえで整備された全国の高速道路は老朽化が進み、数兆円規模の追加補修費が必要と見られている」(与党中堅幹部)とされ、今回一挙に、50年間延長することが決まった。今の現役世代が無料になった高速道路を走ることはほぼ不可能になる。
そもそも高速道路料金無料化は、民主党が2009年の衆議院選挙のマニフェストに「12年度までに原則無料化」を掲げて圧勝。鳩山政権誕生とともに予算措置に動いたが、財源問題で暗礁に乗り上げたいわくつきの施策だ。その後、自民党の政権復帰で無料化はさらに遠のき、2014年には、それまでの有料期限を15年間延長し、2065年までとした。そして、今回の50年の延長である。
5社合計の補修費は1兆5000億円に上る
高速道路各社は昨年以降、老朽化した道路の更新計画を公表したが、この中で東日本、中日本、西日本のNEXCO3社は計1兆円、首都高速道路は3000億円、阪神高速道路は2000億円の補修費用が必要となるとの試算を明示した。5社合計の補修費用は1兆5000億円にも上るため、その財源確保のために有料化をさらに延長しなければならないというロジックだ。
そもそも高速道路は1956年に国の全額出資で設立された特殊法人「日本道路公団」が建設、管理を行っていたが、天下りや談合、族議員の跋扈など利権の温床との批判が絶えず、負債が雪だるま式に増え「第二の国鉄」と言われた。その解消を目的に打ち出されたのが民営化で、2005年に施設の管理運営や建設を行う東日本、中日本、西日本のNEXCO3社、首都、阪神、本四の各高速度道路会社と、保有施設および債務返済を行う独立行政法人「日本高速道路保有・債務返済機構」に分割・譲渡された。
いわゆる「上下分離方式」と呼ばれるもので、機構は保有施設を高速道路各社に貸し付け、その賃貸収益によって債務を返済する仕組みだ。そして機構は当初、2050年までに承継した債務を政府に返還し、解散することになっていた。返済しなければならない債務残高は約40兆円であった。
しかし、先述したように2014年に高速道路の老朽化に伴う修繕のための追加費用が必要として、返済期間が最長60年に見直され、2065年まで存続することになった。