徘徊や妄想、幻覚などの症状は、認知症患者全体の1割以下
脳の老化を防ぐことは大事ですが、それでも認知症になる人はいます。しかしそれほど恐れることはありません。
認知症になると「何もわからなくなってあちこち徘徊する」と思っている人がいますが、認知症患者がみんな徘徊するわけではありません。
今、日本には認知症患者が約600万人いるといわれています。日本の人口が約1億2000万人ですから、20人に1人は認知症ということになります。
しかし、BPSD(認知症の行動・心理症状)と呼ばれる、徘徊や妄想、幻覚などの症状が出る人は、そのうちの1割もいません。
認知症は怖くない
認知症は脳の老化現象ですから、むしろおとなしくなる人のほうが圧倒的に多いのです。
ある出版社のスタッフの方が介護していたお義母さんは、「外は怖いから家にいる」と言って、絶対に1人では外に出ようとしなかったそうです。実は、そういう人のほうが圧倒的に多いのに、認知症患者の悪いイメージを流し続ける人たちがいるのです。
マスコミもその1つです。
正しい情報を伝えていないので、「認知症は人に迷惑をかける病気だ」と多くの人が思い込むようになってしまいました。そして、介護に疲れた家族が老親に手をかけるといったニュースに接し、「自分がもし認知症になったら殺してくれ」と言う人が出てきたり、安楽死論議のようなものまで出てきます。
本来であれば、介護する人が追い込まれないようなシステムづくりを考えなければなりません。にもかかわらず、その部分を飛ばして、「認知症は人に迷惑をかける病気である」ということばかり喧伝され、恐怖を煽っているのが現状です。
老人医療に30年以上携わってきた私に言わせれば、多くの場合、認知症はそれほど人に迷惑をかける病気ではありません。マスコミにはもっとそのことを多くの人に知ってもらうような報道をしてほしいと願ってやみません。