大人になると、資格試験にでもチャレンジしない限り、一生懸命記憶する機会が少なくなります。また、努力しないと、海馬の廃用性萎縮が起こります。これらのことから、記憶力も衰えていくと考えられます。

「年をとるから記憶力が低下する」というのは、必ずしも正しくはないのです。

前頭葉の委縮は40代から始まる

脳の前頭葉が老化すると、感情をコントロールしにくくなります。また、前頭葉は思考や創造、意欲、理性などに関わっているため、老化が進むと意欲が低下したり、突発的な出来事に対応できなくなったりします。

和田秀樹『老害の壁』(エクスナレッジ)

前頭葉の萎縮は、40代頃から始まっているといわれ、MRIなどの画像診断で確認することができます。

とくに何もしないと萎縮が進んで、早い人では50代ぐらいから、頑固になったり、思い込みが激しくなったり、怒りっぽくなる、といった傾向が見られるようになります。

こうした傾向は、その人がもともと持っていた性格が尖鋭化したものなので、人によって表れるものに違いがあります。

中には意欲の低下が進んで、人づきあいが億劫になる人もいます。こうした人が70代を超えてくると、何事にもやる気がなくなり、家にこもりがちになります。結果として、体も脳もどんどん衰えていきます。

生活のルーティーン化が脳を老化させる

こんなふうにならないために、前頭葉の老化を防ぐことが大事です。

前頭葉は想定外の出来事に対処するときに活性化するので、毎日同じような生活を繰り返していると、前頭葉はほぼ確実に萎縮して衰えます。逆に言えば、生活に変化を持たせることで、前頭葉を活性化させることができるのです。

生活のルーティーン化は脳を老化させます。外を歩くのはよいことですが、毎日決まった時間に決まったコースを歩いていると、前頭葉は活性化しません。そこで、少しでもよいので、変化を持たせるようにします。

散歩なら、いつもと違うコースを歩いてみましょう。あるいは週に1日は電車に乗ったり、車で遠出するなどして、知らない場所を散歩するのもよいでしょう。初めての場所なら、前頭葉はフル回転します。

同じ店にばかり行くのも前頭葉を萎縮させます。散歩の途中でおもしろそうな店などを見つけたら、思い切って入ってみることも、前頭葉の刺激になるのでおすすめです。

「老害」などという同調圧力に負けて、閉じこもっていてはいけない理由がおわかりいただけたでしょうか。