ゴミを使ったアートに1500万円の値が付いた

その後、有害物質ガスマスクを届けるために何度か現地を訪れ、そのたびに電子機器などの廃材を日本に持ち帰り、ゴミを利用した作品を作り続けた。

18年3月、ある人の好意で、たった1日だったが、東京・有楽町の東京交通会館で「美術は人を救うためにある、ガーナのスラム街を訪れて」展を開催することになった。

その時、ゴミアートの『Ghana's son』に1500万円の価格が付いたのである。僕はその現実がのみ込めないでいた。なぜならその時僕は、美人画で少しは売れ始めていたが、価格はせいぜい20万~30万円がいいところ。それがいきなりゴミを使った絵が1500万円で売れ、何が起きたのか理解できなかったのだ。

写真提供=MAGO CREATION
真実の湖

なぜ、これほどまでの高値が付いたのか。寝ずに一晩中考えた。それでも意味が分からず、もしかすると「夢を見ているのか」とも考えたが、目の前には実物の絵が存在している。これは現実だ。頭がパンクしそうなほど考えた。そしてこの「価格のからくり」が分かった。そのからくりは本書でじっくり説明していきたい。

文化、経済、環境が急回転を始めた

たった1日限定の展覧会だったが、計2500万円ほど作品が売れた。僕はその売り上げでガスマスクを大量に買い、またアグボグブロシーに向かった。

大量生産・大量消費社会の尻拭いをしながら命を縮めている彼らを救うには、どうすればいいか。一過性の寄付に頼るのではなく、持続可能な活動を考えなければならない。

実は15年11月、同時多発テロが起きたパリを訪ね、そこでサステナブルという概念を知り、持続可能な地球、持続可能な平和などについて考え、作品も発表していた。17年1月にはサステナブルクリエーションカンパニーのビジョンを掲げ、資本金100万円で「マゴクリエーション」を立ち上げた。

しかし、どんな事業をすればいいのか見えなかった。外枠はつくっても中身がなかった。それが一転、何度かアグボグブロシーを訪ね、ゴミを作品化することで、サステナブルを構成する歯車がカチッと組み合わさった気がした。「文化」「経済」「環境」。この3つが結びつき急回転し始めたのである。