ハリウッドドキュメンタリー映画の製作が決まった
資本主義が行き過ぎたせいで、僕には地球がシロアリに食われている状態に感じる。だからと言って、今すぐ大量消費社会から抜け出せるものではない。だからこそ、文化、経済、環境のバランスを取りながら回していくことが、今を生きる僕たちには必要ではないかと思い始めた。
日本で初めてのガーナ展を行った直後、時勢を鑑みるのに長けたアメリカから個展開催のオファーを受けた。僕はそこで、“サステナブル・キャピタリズム”という言葉を初めて使い、ガーナでの体験を語った。するとアメリカの知人たちは、サステナブル・キャピタリズムという言葉に激しく反応し、「超クール」「かっこいい!」「胸に刺さる!」と絶賛してくれた。この個展で、エミー賞受賞監督のカーン・コンウィザー氏に出会い、僕がガーナで計画していたミュージアムを作るまでのハリウッドドキュメンタリー映画を製作してくれることになった。
以来僕は、自分の活動を説明するとき「サステナブル・キャピタリズム」という言葉に収れんさせている。
「僕に投資をしないでください」
20年、ある知人から、ベンチャー企業やスタートアップがビジネスリーダーや投資家にアピールするピッチコンテスト、「ICC(Industry Co-Creation)サミット」への参加を勧められた。僕はその時、ピッチコンテストの意味もどんなイベントかも分からず出場。だた、サステナブル・キャピタリズムの概念を出席者に訴えたかった。
登壇者は多くのスタートアップの若手起業家たち。シードラウンドで資金をお願いしますとか、IPO(新規株式公開)の際に投資をお願いしますと熱弁を振るっていた。一方僕は、「投資とか意味が分からないので僕に投資をしないでください」「寄付はいりません」と断言しながら、ガーナの現状と、これからの時代はサステナブル・キャピタリズムの概念が必要と訴えた。
最終選考に残った10人が登壇し、自分の事業の可能性をアピール。結果、場違いな僕が優勝した。いわば、高校野球の甲子園に「21世紀枠」で初出場した高校が、いきなり優勝してしまったようなものである。
そこから潮目が変わった。僕の作品が企業トップらに次々と購入され、価格も跳ね上がった。僕は「ピカソを超える」と公言しているため、投資目的の人もいないわけではないが、高額作品の購入者の多くは、社会課題の解決を事業として展開している、時代の変化に敏感な経営者たちだ。おそらく、国連が15年9月に定めたSDGs(SustainableDevelopment Goals)の理念を企業に取り込もうと考えても、具体的な姿が見えづらいため、僕の作品にSDGsの可視化を求めたのだろう。
ちなみに僕が「ピカソを超える」と断言できるようになったのも、サステナブル・キャピタリズムの概念に出合ったからだ。