プロジェクトは、まず大学での基礎研究、次にそれを基に企業等法人が中心となって技術開発をする応用研究、そして、それらの研究が評価され、ようやく実証研究へと進んでいく。

実証研究では、大がかりなパイロットプラントを造り、下水処理施設を実際に使うことになる。このレベルまでくると、大学や企業ではなく、県レベルの行政の管轄となる。現在、渡邉さんのプロジェクトは、この実証段階の手前の応用研究まできている。

「この12月に、現在の研究開発進捗状況や課題についての中間報告をおこない、有識者会議から評価を受け、3月の年次評価で継続を認められれば、次年度は20倍の規模で、今年度得られた培養・濃縮・バイオ原油変換の最適条件などを検証していく、ということになるわけです。

図表提供=渡邉信氏
9月はスタート期なので 薄い状態からの移行期(A)を入れると日平均生産量は0.13-0.199g/L。安定期(B)では日平均生産収穫は0.23-0.3g/Lと高い生産量であった(上の図)。10月の日平均生産量は0.2-0.3g/Lとなった(下の図)。

具体的には、たとえば、藻類の収穫量を安定的に確保するという課題があります。いま目標値としているのは、水深1mの100Lタンクで1日リッター当たり0.1から0.2グラムの生産収穫で、この9月の段階では、小貝川東部浄化センターで0.199という値を出すことに成功しています。

一番低くても0.13グラムでした。10月~11月はさらにこれを上回る数字で、リッター当たり0.2から0.3グラムという目標値のマキシマムを超える数値を出しています。

これを維持していきたい。そして、その増殖した藻類を収穫し、高温高圧(350℃ 200気圧)によって有機物を油化する『水熱液化』という技術を使って、原油に変換するわけです」

年間150億立方メートルの下水で原油を生産できる

現在は、いくつかの条件を設定しながら、100Lタンクを使って、どういう条件で藻を培養するのが効率的なのか、最適な条件を見つけようとしている段階。もちろん、自然のまま藻が出てくるのが一番強いわけだが、必要とする藻類の生産量を上げられるかがポイントとなってくる。

写真提供=渡邉信氏
茨城県の小貝川東部浄水センターにおいて、水深1mの100Lタンクで培養実験を続ける。いかに安定的に生産量を上げるかがポイントになる。