藻類バイオマスエネルギー研究を続ける(一社)藻類産業創成コンソーシアム理事長で筑波大学共同研究フェローの渡邉信(わたなべ・まこと)さんのプロジェクトに国の予算がついた。10年ほど前、「日本を産油国にする」と言って顰蹙を買った渡邉さん。しかし、時代はその発言を追うかのように、新エネルギーに向かって大きく舵を切り出した――。

下水を使った藻を繁殖させ原油をつくる

筑波大学教授時代から渡邉信さんが研究を進める藻類バイオマスエネルギーは、下水処理場を使って藻を繁殖させ、濃縮し、原油化するという画期的なプロジェクトだ。下水処理では、有機物や窒素、リンを取り除くために膨大なエネルギーを必要とする。

その一連の処理を藻が行い、その藻を使って原油を生むというのが渡邉さんのめざす着地点だ。日本全国の下水処理場がその舞台である。

プロジェクトは、苦しみをともないながらも着々と進んでいる。

前回のインタビュー(プレジデントオンライン 2022年3月25日)から最も大きく進んだのは、国から研究が評価され、予算がついたことだ。具体的に言えば、国土交通省水管理・国土保全局から年3000万円の予算が2年にわたって下りることになったのだ。

【図表】下水資源と藻類によるバイオ原油生産フロー
図表提供=渡邉信氏

渡邉さんが現在の進捗しんちょく状況をこう言う。

「私たちの研究はいま、実証段階へと移行しつつあります。国交省から2年間にわたって予算がつくことになったのは、下水関係者と勉強会を開いたりしながら、理解を深めてきたことも大きかったと思います。これは私たちにとって、大きな進展でした。下水処理が公共事業である以上、国の理解と支援が欠かせなかったからです。とにかく行政が目を向けてくれたことが重要です。私は、彼らを失望させたくない。いまは成果を上げていくことだけに日々傾注しています」