同じ石炭依存度のドイツが日本を批判できるワケ

日本が考えている長期的な石炭火力からの脱却策は、アンモニア火力への転換である。天然ガスの調達不安が続く状況下では短・中期的に石炭火力への依存を高めるのはやむをえないが、長期的にはいつまでにどの程度石炭にアンモニアを混焼し、最終的には何年にアンモニア専焼に切り替えるか、つまり石炭火力を廃止するかということをはっきりさせなければならないのである。

日本とドイツを比較すると、21年の電源構成に占める石炭火力の比率はぴったり同じで、両国とも29%であった。しかし、石炭火力問題をめぐる両国への国際的評価は、対照的と言っていいほどの違いがある。ドイツは、さまざまな国際会議で、石炭火力をたたむ「正義の味方」のように振る舞っている。一方日本は、石炭火力にしがみつく「悪者」であるかのような扱いを受け、今年も、不名誉な「化石賞」を与えられる羽目になった。

同じように石炭火力を使っているのにもかかわらず、日本とドイツで、なぜこれほどまでに評価の違いが生じるのか。その理由はたった一つ、ドイツが石炭火力を廃止する時期を「2030年までに」と明示している(ロシアのウクライナ侵攻後、ドイツが石炭依存を高めていることから、石炭火力を廃止する時期は数年先延ばしされるかもしれない)のに対して、日本がそれを明示していないからである。

当面する電力危機を石炭火力で乗り切ろうとしている日本は、そうであるからこそ同時に、石炭火力をいつまでにたたむかを早急に明示しなければならないのである。

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