電力確保で頼れるのは結局、石炭火力

結局のところ、22年6〜12月に電力供給予備率を上昇させるうえで大きな役割を果たしたのは、原子力発電ではなく火力発電であった。とくに、石炭火力の貢献度が高かった。

まず、大型の高効率石炭火力の新設が相次いだ。22年の8月には、JERAの武豊たけとよ火力発電所5号機(107万kW、愛知県)が営業運転を開始した。続いて11月には、中国電力の三隅みすみ発電所2号機(100万kW、島根県)も営業運転を開始した。さらに4月に火入れを行った神戸製鋼所の神戸発電所4号機(65万kW、兵庫県)も、22年度内の営業運転開始を予定している。

このように、西日本の周波数60ヘルツエリアで、大型石炭火力の新設が進んだだけではなかった。東日本の周波数50ヘルツエリアでも、3月の福島沖地震で停止していた石炭火力が、次々に戦列復帰した。これらが、電力供給予備率を上昇させる原動力となったのである。

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一体いつ石炭火力依存から脱却できるのか

もちろん、LNG(液化天然ガス)火力も、電力危機克服には大きな戦力となる。しかし、LNGについては、ロシアのウクライナ侵攻の影響でサハリン2からの供給が断たれるおそれがあるなど、調達上の不安がつきまとう。これに対して、輸入先のロシアから他国への変更が順調に進んでいる石炭については、このような不安があまりない。「とくに、石炭火力の貢献度が高い」と述べたのは、このような理由による。

しかしながら、ここで強調しておくべき論点が一つある。それは、いくら高効率の石炭火力であっても、二酸化炭素を大量に排出することには変わりがないという点である。

石炭火力が電力危機克服策として「再評価」され、それへの依存期間が延びるということは、最終的に石炭火力をたたむ道筋を示す必要性がいっそう高まったことを意味する。問題があるAという手段をやむをえない事情で使う場合には、必ず、Aから脱却する道筋もまた、あわせて提示しなければならないからである。