相手に話させすぎても不安を感じさせてしまう
では②の5:5なら、対等な関係だからいいのでしょうか?
これだと二流です。「え? フィフティー・フィフティーでちょうど良い感じなんじゃないの?」と思う方も多いかもしれません。しかし、「人の話を聞く時間」と「自分が話す時間」では、時間の感覚がずいぶんと変わるものです。
交流会やパーティなどで、自己紹介タイムなどの体験はありませんか? 自分が話をしているときは、2分くらいだととても短く感じるのに、他人の2分はとても長く感じると思います。研究によると、相手5割・自分5割でも、「この人はよくしゃべる人だな」と感じる人が多いという結果が出ています。
一流は、自分が話す時間より、相手が話す時間を大切にします。相手の話す時間が7割で、自分の話す時間が3割。これがもっともいいバランスだという研究結果があります。たとえば相手が9割で自分が1割だと、相手にしてみれば、自分ばかり話しすぎていて、不安に感じる割合も多くなるというのです。相手に7割の時間をしゃべってもらえるだけの「聞く技術」を身につけている人が、本当の一流です。
一流は、相手:自分=7:3で会話する
聞いている時間は長く感じ自分が話している時間は短く感じる
「帰宅恐怖症」になってしまった男性の悩み
帰宅恐怖症の末、離婚の危機にいるBさんという男性が、セミナーに参加したことがあります。帰宅恐怖症とは、帰宅困難症、帰宅拒否症とも呼びます。
帰宅恐怖症の男性は、寄り道などして、妻や子どもが寝静まったタイミングで帰ります。Bさんが帰宅恐怖症になった原因は、仕事で疲れて帰っても、妻から育児やママ友の愚痴を聞かされるのがプレッシャーとのこと。「帰宅すると気が休まるどころかよけいに疲れてしまうから、遅くに帰るようになった」と力なくおっしゃいました。
そこでBさんは、残業を買って出たりして、よく会社に居残りをしていました。仕事が早く終わったときは、同僚を誘って飲みに行ったり、漫画喫茶で過ごしていたそうです。
その結果、妻から離婚届を突きつけられました。「妻と話し合った結果、いったんは離婚を回避できたけど、子どもがかわいいから離婚は嫌なんです」ということで、セミナーに参加されました。
私はBさんに、お願いしました。
「奥さんが愚痴を言い出したときに、どんな聞き方をしているのか、ちょっとやってみてください」
セミナーの実習で、他に参加している女性に妻役をやってもらい、いろんな愚痴を言ってもらいました。するとBさんは一つ一つの愚痴に対して、「なるほど、だったらこうしたら?」などと、改善策やアドバイスを入れ始めたのです。「なるほど、Bさん、その聞き方をしていたら疲れるはずですよ」Bさんは、明らかに「アドバイス病」を患っている人でした。