血糖値を乱高下させると認知症リスクが高まる
また、塩気が少ないと食欲がわかない人は、これまでより少し多めに塩も醬油も使ってください。みなさんの敵は低栄養です。低栄養は認知症の進行を促すとされています。絶食はもってのほか。食べないよりは食べたほうが断然いいのです。
何を食べてもかまいません。ただ、血糖が乱高下しないように食べ方には気をつけましょう。血糖の乱高下も認知症リスクを高めることがわかっています。食べ始めに甘いものを食べると血糖値が急上昇してしまいます。サラダや副菜などから食べましょう。
野菜は血糖値コントロールのために食べると思ったほうがいいかもしれません。繊維質のものをよく噛んでゆっくり食べると、血糖値の上昇を抑えることができます。ただし、いわゆる「ベジタブルファースト」にすると「サラダだけでお腹いっぱいになっておかずが食べられない」という方もいます。肉や魚などのたんぱく質を優先的に食べてください。
また、食事が不規則になったり、長時間絶食したあといきなりたくさん食べたりすると、血糖値が乱高下してしまいます。食事の内容だけでなく、食習慣で、健康でいられるかどうかが左右されます。ギアチェンジは65歳ぐらいから行うのがベストと申し上げましたが、突然変化させるのではなく、少しずつ体を慣らしていきましょう。
いままで厳しく制限していた食生活を、ある日を境にガラリと変えると体に負担がかかります。糖質制限をしていた人も、糖質を少しずつ元に戻していきます。ポンとカロリーを増やすよりも、たんぱく質を足していくことから考えるとよいでしょう。
野菜のみそ汁よりも豚汁がオススメ
まずたんぱく質。そして主食と副菜というバランスが食事のとり方の基本です。
よく「30品目以上とりましょう」などと言われますが、どんなにたくさん食べてもたんぱく質がなければ筋肉はつくられません。たんぱく質を摂取することが何より重要なのです。自分の食事を見直し、たんぱく質が含まれているかどうかをチェックしてください。
「年をとったら一汁一菜でじゅうぶん」とか「粗食こそ美食」という考えは捨てましょう。人生50年の時代ならともかく、いまは100歳を超えて生きる時代です。日本人の食への考え方も時代に合わせて変えていかなくてはなりません。
ごはんと野菜の味噌汁だけでは、たんぱく質は絶対的に足りません。どうしても食欲が出なくて一汁一菜でじゅうぶんというときにも、味噌汁の具に豆腐や肉、魚などのたんぱく質を必ず入れてください。豚汁なら文句なし。調理が面倒なら、味噌汁に鯖缶を丸ごと入れた鯖の味噌汁なんて簡単でいいでしょう。栄養価がグンと上がります。
「たんぱく質、たんぱく質と言うけれど、ミネラルやビタミンだって不足したらいけないでしょう」などと栄養について細かく心配する方もいますが、たんぱく質と主食と副菜という基本の三本柱がしっかりしていれば、ミネラルやビタミンはあとから自然とついてくるものです。患者さんやご家族にも「あれこれ細かく悩む暇があったら、なんでもいいからたんぱく質をとってください」と伝えています。