最適なダイヤを分単位で組み直す
コロナ禍以降、貨物便の運航計画は旅客便と同じく月単位で見直している。
ただ旅客便の場合は基本的に、週に何便を運航するか、はたまた全便運休するのか、運航すればどの機材をあてがうのか、などといった調整のみだ。客が乗り継ぎ便なども考慮に入れて最適な便を予約しているケースがあり、出発時間は簡単には動かせない。
一方の貨物便については、出発時間なども逐一動かしていく。荷主は、この混乱する局面であれば一定の時間変更を許容してくれることがほとんどだ。機材や人員を効率的にやり繰りするため、最適なダイヤを分単位で組み直す作業を進めていく。貨物便の運航計画を策定するANAネットワーク部の北爪友作は「ずっと繁忙期が続いているイメージ」と苦笑するが、「その分結果的に利益につながり、需要に応えられているということでもある。非常にやりがいがある」と話す。
国際線は羽田発着から再開するという方針を転換
貨物事業の収益性を高めるためなら、一度決めた大方針の変更もいとわなかった。
ANAHDが20年10月に発表した事業構造改革では、限られた経営資源を効率的に運用すべく、国際線では羽田発着の高収益路線から運航を再開させる方針を示していた。ただ、それから1年半後。
22年3月に運用を始めた「夏ダイヤ」では、羽田―ワシントン線、羽田―ヒューストン線のほか、羽田―シアトル線、羽田―バンクーバー線を成田発着に変更するなど、旅客便の運航再開は成田発着が中心となっている。
コロナ禍前は、旅客を運ぶついでに貨物も運ぶのが旅客機運用の基本的なスタイルだった。だが、国際線の旅客需要が低迷する中ではその優先順位が逆転している。また日本の水際対策が諸外国に比べ厳しい中、日本を訪れる旅客数の回復よりも、アジアと北米の間を移動するための乗り継ぎ地点として日本の空港を利用する旅客数の増加ペースが上回っていた。それであれば、都心へのアクセスが悪い成田発着に変更しても旅客需要への影響は限定的。国際貨物の玄関口である成田を基地とする専用機と組み合わせれば貨物需要をより多く取り込めると判断した。