医師も迷いの中にいる

治療の専門家である多くの医師にとって、こういう問題は得意でないのかもしれません。

医師も迷いの中にいるのかもしれない、ということがよく表れている、会田あいた薫子かおるこ氏による研究データがあります。

「認知症が進行して食べられなくなった患者さん(現在は点滴で栄養補給中だが、点滴だけでは十分な栄養はとれない)にどの治療法を勧めますか?」という問いに対して、789人の医師から回答を得ています。

その結果が図表1です。

「点滴」が一番多く51%、「胃ろう」は意外に少なくて21%、「何もしない」医師も10%います。

ただ、一番多い「点滴」にしても、点滴だけでしっかり栄養がとれるとは言えないので、「これがベスト!」というより、「何もしないよりはいまの点滴を続けたほうがいいかな」といった考えだと思います。

ちなみに、ここで回答されている医師は全員「日本老年医学会」会員なので、終末期医療に対しては強い思いのある先生方だと思います。その人たちの間でもこれだけ意見が分かれるということです。

「死んでもいいから口から食べたい」が19%

もう一つ「あなた自身が患者さんだったらどうしますか?」という質問もあります。

森田洋之『日本の医療の不都合な真実』(幻冬舎新書)

自分自身の話になると、「何もしない」が一気に増え27%、また「死んでもいいから口から食べたい」が19%となります。

最初の質問への回答とまったく違う傾向です。

正解のない終末期医療の世界で、医師も戸惑っていることの表れかもしれません。

前回の記事の胃ろう造設手術数のデータでは、胃ろうの件数にかなり地域差があることがわかりました。

この結果も、正解がない世界で医師がみな戸惑っている証拠かもしれません。

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