同様の問題はアフリカのみならず、世界各地で生じているが、こうした問題につながるとされる温室効果ガスを排出してきたのは、気候変動対策を呼びかける先進国に他ならない。

もちろん、エジプトのエルシーシ大統領は、途上国側も気候変動対策に注力すべきだという立場である。しかし途上国のノウハウだけでは、十分な気候変動対策など不可能だ。

巨額の資金が必要となることもあり、途上国が気候変動対策を進めるためには、それを呼びかける先進国が適切な支援を行うべきであるとまっとうな主張をしたのである。

ウクライナ戦争で石炭火力に回帰

その後、今年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで、世界のエネルギー事情は大きく変化した。特に途上国に対しても声高に気候変動対策の実施を訴えていたEUは、ロシア産の天然ガスの価格が急騰したことと、さらにロシアからガスの供給が絞り込まれたことを受けて、「時限的な措置」としながらも石炭火力発電を再開させた。

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その結果、EUの今年7月時点における石炭火力による発電量(12カ月移動平均)は今年1月に比べて6.5%増加した。一方で、EUが重視する再エネによる発電量(同)は1.5%増にとどまった。有事に当たり、弾力的に対応できたのは石炭火力の方だったわけだ。そして電源構成に占める石炭火力の比率(同)も15.2%まで上昇した(図表1)。

このままでは途上国が耳を貸さなくなる

EU各国は石炭火力の再活用を「時限的な措置」と強調するが、気候変動対策を推進する立場から、昨年のCOP26で石炭火力に厳しい態度で臨んだ経緯がある。

そのため、石炭火力の再開に関して、EUは今年のCOP27で説明責任を果たすべきではないか。真摯しんしなスタンスで臨まなければ、途上国はEUの主張に対して耳を貸さなくなるだろう。

そのEUの閣僚理事会(加盟各国の閣僚から構成される立法・政策調整機関)は10月24日、直前に行われたEU首脳会議での総括を受け、今年のCOP27に向けたEUの交渉上の立場を発表した。

この中で閣僚理事会は、パリ協定の目標を実現するため、全ての条約締結国が野心的な目標や政策を掲げることを求める方針を示した。

一方で石炭火力発電に関して閣僚理事会は、昨年COP26で合意された「段階的な削減」を条約締結国に対して求めるとの方針を示すにとどまった。