中国から資金がどんどん流出する恐れ
習政権は体制強化のための政策運営をより優先し始めている。その弊害として、不動産バブルの後始末が後ずれする可能性は高まった。バブルの後始末が遅れれば、“羹に懲りてなますを吹く”、というべき過度なリスク回避の心理が経済全体に蔓延する。そうなると、中国経済全体で効率的に付加価値を生み出すことは、これまで以上に難しくなるだろう。
一方、鉄鋼や石油化学などの既存分野では、国営・国有企業などの過剰生産能力が追加的に深刻だ。債務問題など中国経済が抱える負の要因の深刻さは、さらに増すだろう。8月まで7カ月連続で、外国人投資家による中国債の保有金額は減少した。債務問題の深刻化などを背景に、今後、債券を中心に資金流出はさらに増える可能性が高い。
高度経済成長期はついに終焉を迎えた
今後、中国経済の期待成長率は一段と低下せざるを得ないだろう。現在の中国は、輸出、投資に代わる、新しい成長の源泉を確立、強化しなければならない非常に重要な局面を迎えている。1978年の改革開放以降、中国は外資誘致を進めた。沿海部の都市では工業化が進み、農村部から安価かつ大量の労働力が供給された。中国は“世界の工場”としての地位を確立し、輸出主導で高い経済成長を実現した。
リーマンショック後、経済成長の牽引役は輸出から投資にシフトした。内陸部での不動産開発、高速鉄道や高速道路、EV普及のための充電設備の整備などによって高成長が維持された。しかし、インフラ投資需要は飽和している。不動産バブル崩壊により不動産市況が下げ止まる兆しも見られない。
中国の高度経済成長期は終焉を迎えたと考えられる。本来であれば、習政権は体制強化よりも、内需拡大に向けた改革を加速させなければならない。主な取り組みとして、不良債権処理や市場原理の導入加速は欠かせない。それは、ITなど成長期待の高い分野に生産要素を再配分して、新しい需要を、より効率的に創出することを支える。それができれば、膨大な人口を強みに中国が消費大国としての地位を確立する可能性はある。