同級生の家へも布教で訪問「お前何やってんの?」

筆者は、家庭にタブーが生まれるとき、「短絡的思考」「断絶・孤立」「羞恥心」の3つがそろうと考えている。

桜木家の場合、両親が入信したときが、タブーが生まれた瞬間だった。桜木家は入信後、家族の笑顔が消え、父親が暴力的になり、夫婦仲も悪化したという。はじめは、両親は家族のために良かれと思って入信したのかもしれないが、最終的には両親が宗教に妄信的になり、現実の子供たちと向き合うことができなくなった結果だと思えてならない。

もちろん教団によるマインドコントロールの巧妙さも見過ごせない。外部との接触を絶つよう仕向けられ、情報が遮断されたうえ、社会から孤立した状況だった両親は、自分たちが正しいのか間違っているのかを正常に判断することが難しい状況だったのだ。

写真=iStock.com/SvetaZi
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「一家で信者になってから、社会から取り残されたような感覚がありました。周りの友達と話が合わず、自分は他の人とは違うんだと感じました。近所の人からも変な目で見られるので、疎外感がありました。ただ、『周りと違うのは正しいこと』で、『神から選ばれた特別な存在』と教えられるので、それを信じていました。教団は、信者を『温和な羊』、一般の人を『悪魔の山羊』と教え、明確に人間を二分割しているので、マインドコントロールされている信者は、自分たちは救われる羊だとして、その疎外感すら満足してしまうようですよ」

桜木さんは学校生活の中で、恥ずかしさとともに寂しさを感じていたと話す。

「一番嫌だったのは、親に連れられての奉仕活動(布教)です。自分が住んでいる地域を回り、もちろん同級生の家にも行きます。そのため翌朝学校で、『お前何やってんの?』と面白おかしく噂されていることがあり、本当に恥ずかしかったです。学校にいづらくなると、必然的に集会が居場所になってしまっていました」

桜木家のような家庭のタブーの発生は、どうしたら防げたのだろうか。

「親御さんが宗教に入信した場合、その子は通常、二世として自動的に入信することになります。子供の力ではどうすることもできません。だから私が親御さんたちに願うのは、まず知ること。せめて入信する前に、その宗教がどのようなものか調べてほしい。そして被害者の人には、声を上げてほしい。私は、人間を狂わせる組織が今も存在することが問題だと思っています。それだけ巧妙なロジックで人の心を入れ替えているんでしょう……。あとは、子供が親の宗教について気軽に相談できる窓口があったら心強いと思います。私の子供の頃は、変だと思っていても、相談できる場所がありませんでしたから……」

家庭で弱い立場の子供にはなすすべもない。せめて家庭の外で子供の声に気付いてくれる大人の存在があれば、桜木さんのように1人でもがき続ける子供を救うことができたかもしれない。

「変だ」「おかしい」と感じたとき、それを正直に口にできない家庭には多かれ少なかれタブーがある。あなたの家庭ではどうだろうか。

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