今回は、小学1年生の時に、両親が「新興宗教」に入信したという現在40代の男性の事例を紹介する。彼の家庭のタブーはいつ、どのように生じたのだろうか。タブーのはびこる家庭という密室から、彼はどのように逃れたのだろうか――。
小学校1年生の時に両親が「新興宗教」に入った
中部地方在住の桜木瞬さん(仮名・40代)は、自営業を営む父親(当時29歳)と専業主婦の母親(当時25歳)の間に生まれた。
冗談を言って家族を笑わせる父親と、優しい母親の夫婦仲は良く、2歳上の姉を含む家族4人で地域のイベントに参加したり、近くに住む父方の祖父母と温泉旅行に行ったり、笑顔の絶えない家庭だった。
ところが、桜木さんが小学校に入学した年の秋、桜木さんの家に2人組の女性がやってきたことがきっかけで、徐々に生活が脅かされていく。女性たちはある新興宗教の信者だと名乗った。
自営業者の父親と専業主婦の母親は、最初は玄関で少し話を聞いただけだったが、2人組は、約1週間後にまたやってきた。
「興味がありそうだった人の家に目をつけておき、時間を置いて再勧誘に来たのでしょう。父は追い返したのですが、2人組の穏やかな雰囲気に興味を持ち、次第に話を聞くようになっていったようでした」
桜木さんはこう振り返る。
両親は、みるみるうちに話に引き込まれていった。最初は女性2人から自宅で話を聞くだけだったたが、2カ月後には男性が加わった。男性が両親を担当し、女性2人は桜木さんと姉を担当するようになった。
ほぼ同時に、日曜日の集会や1週間に3回の頻度で行われる活動にも参加するようになり、約3年後には、両親は正式な信者になるための儀式を受け、さらに約2年後には、父親は地域の信者たちをまとめる立場となり、最終的に地域の信者たちのトップにまで上り詰めた。
「日曜は2時間、火曜の夜は1時間、木曜の夜は2時間の集会に参加し、その他に水曜は家族だけで行う聖書の勉強が1時間。信者が来ての聖書の勉強は土曜日の夜1時間ぐらいだったと記憶しています。それ以外は勧誘活動で家から家を訪問。遊ぶ時間なんてなかったですね」