誰も気が付かないままマインドコントロールされる

桜木さんは、「楽園なんかいつ来るんだよ! 信者は幸せになれるんじゃないのかよ!」と心の中で叫んでいた。それに気付いたのか、トップたちが桜木さんの矯正に力を入れ始める。高3になると、「奉仕の僕」への異例の昇格。「奉仕の僕」は長老の下にあたり、さまざまな権限が与えられた。

特権とは以下のような、新しく課される仕事のことだ。

・月に90時間の伝道(奉仕)活動
・奉仕活動の司会者(家から家の布教活動にどの順に周るか指示する)
・木曜日の集会の総合司会
・集会前後の祈り
・日曜日の公開公演(ステージの演題でテーマにそって45分話す)
・新しい研究生の集会での司会

「トップたちも父親も、私に考える時間を与えないくらい接触してきたため、私はすっかりマインドコントロールされてしまいました」

桜木さんによると、教団のマインドコントロールは巧妙だという。

まず、身近な生活に役立つ話を、教団が運営する出版社が発行する聖書や書籍から抜粋して聞かせ、信頼させる。それから不安をあおり、「じゃあどうすればいいの?」と誘導。不安の原因である、テレビや書籍、友人・知人など、外部との接触を“悪魔の誘惑”として制限するよう助言。すると、入ってくる情報は、信者か教団が運営する出版社の書籍だけになる。

赤い血しぶきのような、脳内の情報の流れでつながっている人々の抽象図
写真=iStock.com/ajijchan
※写真はイメージです

集会や書籍では、教団の教えに従わない者のおぞましい死を教え、「従えば楽園で永遠の命を得る」という両極端な選択肢を示し、「さあ選びなさい!」と促す。頻繁に神に祈るよう教えることで、実際に神がいるように錯覚し、やがて親近感さえ覚え始める。

極め付きには、神を信じる人は、「たびたび親族や友人から反対される」「悪魔が神から離そうと躍起になる」と教えるため、実際に親族や友人から、「新興宗教なんてやめなよ」「その宗教おかしくない?」などと言われると、「悪魔の攻撃だ!」「教団の教えの通りだ!」となる。

そうなれば信者はさらに外部を遮断し、聖書や書籍に頼り、自分の頭で考えなくなる。このループが、教団のマインドコントロールの仕掛けだという。

「特に、瞑想させたりおまじないを唱えたりするわけではないので、誰も気が付かないままマインドコントロールされてしまうのです」

成長とともに教団に対する疑問が大きくなり、反乱因子として幹部に警戒され、マインドコントロールされてしまった桜木さん。この後、いつ、何がきっかけで教団から離れようと思ったのだろうか。教団から離れることによって、幸せな生活を取り戻せたのだろうか。ぜひ後編で確認してほしい。(以下、後編へ続く)

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