9割の経営者が見過ごしている無敵のパーパス

キャリバーは、企業文化や価値観を補強する方法とシステムも開発し、現在リーダーシップ研修で教えている。また、同社の顧客と直接接点のある従業員が顧客の信頼を勝ち得たインパクトを十分に記憶に残しておけるように、同社の経営陣は毎週の打ち合わせで各店舗が自分の顧客の数を振り返ることにしている。

こうした打ち合わせの間中、スティーブによると「チームは、その店舗が私たちのパーパスにどれだけ近づいたかを測定するいくつかの指標をチェックします。その中で圧倒的に重要な指標がNPSです。そうした過程を通じて、個々のチームメンバーは「ほら、あなたは正しいことをしているじゃないですか!」と称賛されるのである。

キャリバーの物語は、拙著『「顧客愛」というパーパス<NPS3.0>』を通じて何度も繰り返される素晴らしいパターンを示してくれる。ビジネスが長期的に繁栄し、あらゆるステークホルダーに利益を与えるパーパスだ。そして、それはたった一つしかない。「顧客の生活を豊かにすること」。これだ。

ただし、自社の主なパーパスを顧客の生活を豊かにすることと考えているビジネスリーダーは、わずか10%だということを覚えておいてほしい。さらに一段と懸念すべき事実を指摘しておくと、今日の企業経営者のなんと90%が、顧客を中心に据えるというパーパスには無敵のメリットがあることを無視している。

明確な存在意義がない戦略は危機に弱い

だが、勝つための公式は比較的単純だ。パーパスに従って勝利するリーダーは、優れたチームメンバーを引き寄せ、刺激し、顧客の日々を明るくする行為を通じて、人生の目的を見つけられるよう支援する。従業員と彼らのチームが、顧客の生活を豊かにして感謝されて報酬を得ることができれば、パーパスにけん引された弾み車が持続可能な成長と経済的な繁栄を加速させるのである。

フレッド・ライクヘルド、ダーシー・ダーネル、モーリーン・バーンズ著『「顧客愛」というパーパス<NPS3.0>』(プレジデント社)

単純化して言えば、これが個人と組織の成功への道だ。このパーパスに基づく戦略は、景気後退やパンデミック、そして、しだいに頻度を増してきた予想できないブラック・スワンと言われる事象にも強い。このような事態になると、説得力のないアプローチは脆さを露呈するものなのだ。

重要なのは、リーダーがNPSを使って実現しようとしている第一のミッションは何か、を見極めることだ。NPSを活用して、従業員は自分が接している人々の生活をいつも豊かに、つまりその人らしい生活を送る手伝いをする。これが偉大な組織のパーパスなのだ。NPSを正しく設計して導入すれば、NPSは組織のネット・パーパス・スコアになり、そのパーパスの達成に向けた進捗しんちょく度合いを測ることができる。

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