企業から「0~10点で表すとして、○○を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」と質問されたことはあるだろうか。これは顧客ロイヤルティをはかる「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」を調べるものだ。経営コンサルタントのフレッド・ライクヘルド氏は「成長する企業はNPSが高い。つまり顧客の生活を豊かにすること以外に、常に勝ち続けるパーパスはない」という――。
近代大都市の金融街
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成功し続ける企業は「顧客第一」を目的に掲げている

自分の目的(パーパス)は何か? ほとんどの個人と企業にとって、これは一種の誘導尋問だ。個人にとって、「人生の目的とは何か?」という問いは哲学的で宗教的な響きを含んでおり、自分がなぜ存在しているのか、まさにその理由を探求したくなる。誰もが自分自身のためにこの問いに答えを出したうえで、できればその目的を達成すべく生きられればそれに越したことはないだろう。

だが、企業におけるパーパスについては大胆な主張をすることにした。常に勝利するための目的、いわば自社の存在意義(パーパス)は一つしかないからだ。もちろん、魅力的に見えるパーパスは数多くある。「勢力を拡張してビジネスを永続させる」「最低コストで最も効率的なプロバイダになる」「自分たちの業界で最大になる」「トップクラスのテクノロジー企業になる」「働きやすい会社になる」「顧客に幸せを届ける」「汚染を減らす」「模範的なガバナンスを実践する企業になる」「株主の富を最大化する」「不平等をなくし、社会正義を実現する」といった具合にだ。だが、最も強靭でいつまでも成功し続けられる企業は、どんなときにも最優先するパーパスを一つ選ぶ。それは、「顧客の生活を豊かにする」こと。そして、このパーパスに従って事業を運営する。

なぜ「株主第一」の運営は失敗するのか

これは、さほど広く認知された見方ではない。ベイン・アンド・カンパニーの調査によると、顧客価値の最大化を第一のパーパスとしている企業は全体のわずか10%だった。多くの企業はまだ、株主価値の最大化をど真ん中に置くという、旧来の金融資本家のマインドセットで事業を運営している。過去40年間の私の経験を踏まえると、それらの企業と比べても、顧客を第一に考える企業が、顧客だけでなく、あらゆるステークホルダーに対してより優れた結果をもたらすことができる。

顧客を幸せにすることで、投資家も幸せにできる。ところが、逆の戦略は間違いなく失敗する。なぜなら、企業が投資家の利益を最優先にすると、顧客をないがしろにする行為を頻繁に行うようになるからだ。

アップル、アマゾン、T-モバイル、エンタープライズ・レンタカー、コストコ・ホールセール・コーポレーションはもちろん、ワービー・パーカー、ペロトン、チューイーといったデジタル革命企業をはじめとする今日の成功企業は、顧客中心の考え方を事業運営にうまく組み入れてきた。各社のリーダーたちは、他のすべてのステークホルダーの利益よりも、顧客の利益を第一に考えるよう社員たちを刺激してきたのだ。

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