ハイリターンを実現した企業

顧客資本主義の企業が勝利する証しは他にもある。実は、私は「最高の成長エンジンの燃料は顧客ロイヤルティである」という考えに基づいて、長年にわたってNPSリーダーに投資してきた。そして、これらの企業はF・R・E・D(Foster Recommendation, Eliminate Detraction:推奨される企業を選び、非難される企業を排除する)という信条に従って成長している。

フレッド・ライクヘルドほか『「顧客愛」というパーパス<NPS3.0>』(プレジデント社)
フレッド・ライクヘルドほか『「顧客愛」というパーパス<NPS3.0>』(プレジデント社)

この投資戦略の結果を示すため、私は『ネット・プロモーター経営』執筆の調査で確認した11社のNPSリーダーでFRED株式指数(FREDSI)を策定することにした。つまり、FRED株式指数は各産業セクターで最高のNPSを達成している、いわば顧客を愛するチャンピオン企業で構成されたポートフォリオのTSR(株主総利回り)を追跡したものということだ。

また、ベインの調査で、他業界でも明白なNPSリーダーが何社か見つかったので、2010年にテキサス・ロードハウス、2015年にディスカバー・ファイナンシャル・サービシズとファーストサービス、2020年にテスラとチューイーを指数に加えた。FRED株式指数は、株式市場(バンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックスをベンチマークに使っている)を一貫して上回り続けている。

FRED株式指数のリターンは年率26%を上回り、資産額ではこの10年で株式市場の3倍近くになった(図表2)。忘れてはならないのは、私たちはTSRがすでに明らかになった後で、つまり過去に遡ってポートフォリオを構築したわけではない、ということだ。あくまでも業界レベルのNPSに基づいて、顧客を愛する勝者を前もって選んだ結果なのである。

FRED 株式指数は株式市場を上回る
出所=Capital IQ

どんな企業も、偉大なパーパスを持たなければ偉大にはなれない。これに尽きる。ネット・プロモーター・フレームワークは『ビジョナリー・カンパニー2』からの教訓を補完し、そしておそらくはいくつかの弱点を埋めている、と私は考えている。『ビジョナリー・カンパニー2』は金融資本主義のマインドセットを採用し、偉大さを金銭的な結果で定義した。

だが、私は「勝利のパーパス」という基準で偉大さを測ることを薦めたい。また、コリンズは、リーダーは自分が情熱を持てる分野に集中すべきだと強調したが、ネット・プロモーターは情熱を傾けるに足る第一のパーパス――そして常に勝ち続けるパーパス――は顧客の生活を豊かにすること以外にない、と断言する。

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