「愛媛県庁は暗い、は間違いだった」と謝罪
ジャイアント一行が到着する直前、中村はマイクを持ってボランティア職員をねぎらった。うれしくてたまらなかった。
「1年半前に皆さんのことを暗いと言いましたけれども、きょう皆さんの姿を見て間違いであったということに気付きました。心から謝罪させていただきます」
就任直後にマスコミとのインタビューで「ここは暗いですね~。見たことありません」と言い、県職員から顰蹙を買ったエピソードを振り返りつつ、頭を下げたのである。大拍手が巻き起こった。
今治店もバイシクルユニットも「ジャイアントからのプレゼント」だ。だが、中村にしてみたら「劉会長からのプレゼント」のように感じられたのではないか。
「ここは世界最高のサイクリングパラダイス」
言うまでもなく今治店もバイシクルユニットも前座にすぎなかった。本番を迎えて「しまなみ海道サイクリング」は一段の盛り上がりを見せた。
当然だろう。劉は台湾の財界人やメディア関係者ら40人以上を引き連れて来日し、4日間かけて270キロメートルを走破したのだ。日本側から中村を筆頭に100人以上が加わり――広島県知事の湯崎英彦も参加――総勢150人が参加するイベントになっていた。
ジャイアント会長は瀬戸内海の多島美に感嘆し、「ここは世界最高のサイクリングパラダイス」と繰り返し公言。台湾は「日月潭」をはじめ魅力的サイクリングロードをいくつも抱えているというのに、である(しまなみ海道と日月潭は2年後に姉妹自転車道協定を締結)。
「しまなみ海道を世界へ情報発信する」という点では世界的な部品メーカー関係者の存在も見逃せない。参加者の中には台湾系サドルメーカー大手ベロの経営トップもいたし、アメリカ系変速機メーカー大手スラムの経営トップもいた。それぞれが独自の業界人脈を通じて「しまなみ海道はすごい!」と発信した。