今治に「世界初の地方都市直営店」をプレゼント
劉と一緒にしまなみ海道を走破すると約束した手前、中村はサイクリングの練習を怠れなかった。
直前のゴールデンウイーク中、妻と一緒にジャイアント今治店に行き、ロードバイクをレンタル。続いてしまなみ海道の「サイクリングロード」――全長約70キロメートル――に入り、ほぼ中央に位置する「多々羅大橋」までの往復80キロメートルを走った。
JR今治駅構内に店舗を構えるジャイアント今治店はしまなみ海道の終点に位置する。ここで中村夫妻がレンタルサービスを利用したのには訳があった。同店は「ジャイアントから愛媛県へのプレゼント」として、ゴールデンウイーク前にオープンしたばかりだったのだ。
「プレゼント」であるだけに今治店は異例ずくめの店舗だった。まず、ジャイアント伝統の堅実経営路線から逸脱し、「世界初の地方都市直営店」としてオープン。さらに、国内ジャイアント店としては初のレンタルサイクルサービスを提供していたほか、男女別のシャワールームまで備えていた。
劉会長のお出迎えに700人のボランティア職員
「ジャイアントからのプレゼント」はもう一つあった。愛媛県警用にジャイアントが用意した特別仕様のマウンテンバイク16台だ。
マウンテンバイク16台の寄贈に合わせて県警では交通安全担当の自転車部隊「バイシクルユニット」が発足。スポーツ自転車による専門部隊は欧米では珍しくないものの、日本では初めてということもあって注目を集めた。
県側は2012年5月12日に贈呈式を予定。しまなみ海道ツアーに参加中のジャイアント一行が来庁するのに合わせれば、知事とジャイアント会長を交えた式典にできると判断した。
県側にしてみればできるだけ手厚いおもてなしで一行を出迎えたいところだった。ところが、同日はあいにくの土曜日。職員に呼び掛けてもせいぜい150人くらいしか集められないのではないか、と中村は予想した。
予想は見事に外れた。県庁本館前に総勢700人の職員が集まったのである。強制されたわけではないから全員がボランティアだ。