もちろん、搭乗客全員がこれを食べる必要はない。LCCなので食事はオプションであり、事前に注文しない限り提供されることはない。コオロギ粉末を使わない別の機内食メニューも豊富に用意されている。
ジップエアはこれまで、機内食を事前注文制とすることで、食品ロスの軽減に努めてきた。その考えをさらに進め、飼育による環境コストが畜肉よりも低いコオロギを取り入れることにしたのだという。
環境に優しく、栄養価も高いと高評価
斬新な機内食は、海外でも報じられた。非常に好意的な文脈だ。
国際航空ニュースサイトのシンプル・フライングは、「旅の楽しみとやりがいのひとつは、ふだんであれば食べないものに挑戦することです」「日本のジップエアは、遠い空港からやってきた旅人たちに、よくあるランチにちょっとした工夫を加えたものを提供すると約束しています」と報じている。
時期尚早だった可能性もあるとチクリと指摘しつつも、環境負荷の軽減に貢献しているとの評価だ。1〜2年後にこの試みがどれほど受け入れられているか興味深い、と記事は結んでいる。
海外の科学ニュースサイトであるZMEサイエンスもこの件を取り上げ、コオロギはカルシウムや亜鉛など豊富に含み、脂肪が少ないとの利点を解説している。
同記事は、牛など畜肉と比べて環境対策に優れるとも述べている。最終的に取れる肉に対して要する飼料の量を示す「飼料要求率」が低いためだ。
かつてはアリをまぶしたコース料理が話題に
もちろん昆虫食にチャレンジする機会は、機上だけではない。2015年には、東京のホテルで高級コース料理に昆虫を取り入れた試みが話題となった。
世界一のレストランとも評されるデンマークのNoma(ノーマ)が、都内のホテルに期間限定のポップアップ店舗を出店し、アリを使った料理を提供している。
同レストランは、英『レストラン』誌が毎年選出する「世界ベストレストラン50」の上位常連だ。2014年、2021年など、これまでに5回首位に選ばれている。
そのNomaが東京の臨時店舗で、生きたエビにアリをまぶした料理を出して注目を集めた。氷が盛られた皿のうえに、まだ生きているむき身のボタンエビを1尾置き、上に7匹ほどの黒アリを散らしたものだ。
英ガーディアン紙は当時、この料理が4万円のコース料理の一皿目として提供されたと報じている。見た目のギミックが目を引くだけでなく、味のマッチングも考え抜かれており、アリのもつ蟻酸がエビに風味を添えるとの解説だ。