「瀬戸内ルネサンス」の息吹が出ている
本連載で「瀬戸内ルネサンス」というキャッチコピーを使っているのは、瀬戸内で新たな起業家が続々と生まれて地元経済に新風を起こしつつあるからだ。
里山・里海やルーラル起業家から想像できるように、キーワードはSDGsやESG。グローバル性も欠かせない。一地方で完結するのではなく、グローバルな広がりがあってこそ未来への懸け橋になる。
瀬戸内には起業の伝統もある。瀬戸内を代表する起業家の中には、100円ショップ「ダイソー」を展開する大創産業の創業者・矢野博丈氏もいれば、ベーカリー「アンデルセン」を展開するアンデルセン・パン生活文化研究所の創業者・高木俊介氏もいる。
矢野氏は国際的な評価を得ている。2018年に「EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(EOY)」に選出され、日本代表としてモナコの世界大会に出席しているのだ。EOYは国際会計事務所アーンスト・アンド・ヤングが1986年に創設した起業家表彰制度だ。
果たして瀬戸内は大きなイノベーションを起こし、半世紀後には日本――あるいはアジア――をリードする地域になっているだろうか?
現状では「そんなことあり得ない」と一蹴する人がほとんどだろう。だが、半世紀前に誰かが「シリコンバレーはいずれ世界のIT首都になる」と予測したとしたら、まともに取り合ってもらえなかったのではないだろうか。
一番重要なのは、既存秩序に安住せずに何かに挑戦しようとするアントレプレナーシップ(起業家精神)だ。それでこそイノベーションが起きるし、新たな産業や機運が生まれる。その面で瀬戸内に変化の息吹が出ているのは間違いない。