英単語に限らず、規則性、つまり「似ているもの」を意識することは、“記憶の圧縮”において非常に重要だと、西内さんは話す。好例をひとつあげよう。

「サラリーマンのお父さんと専業主婦のお母さん、結婚している長女、未婚の長男と次女、長女の夫とその子ども」という二世帯同居の家族がいる。

この家族構成を記憶せよ。

こんな問題を出されたとする。

これを完璧に記憶する裏ワザは「似ているもの」に置き換えることである。そう、この家族構成は「サザエさん」一家とまったく同じなのだ。それに気がつけば、無理に暗記する必要はない。

言うまでもなく、これは「サザエさん」を知らなければ成立しない方法である。つまり、自分が蓄えた知識のなかに「似ているもの」があれば、覚えやすくなるというわけだ。

椋木修三 むくのき・おさみ●1954年生まれ。中央大学中退。日本ブレインアップジム代表、東京カルチャーセンター記憶術講座主任講師。『新超高速勉強法』『速読受験術』など著書多数。

「新しいことを学ぶときも『要するに、あの法則と同じだな』と気づけば話は早い。知識の蓄積を活用できるかどうかで差が出るんです。年齢とともに、ハードウェア的な記憶機能は低下しますが、『似ているもの』を意識するといった記憶のコツをつかんでいれば、まだ伸びしろがあるんですよ」(西内さん)

改めて考えると、「記憶する」ことは「整理する」作業と不可分のようだ。

もうひとりの記憶の達人、日本ブレインアップジムで記憶術を伝授する椋木(むくのき)修三さんも事前整理の重要性を説く。

「自宅の台所のどこにフォークがあるかを覚えているのは、食器棚が整理されて、置き場所が決まっているから。整理されていないものを覚えるのは難しい。なので、『どう整理するか』をまず考えるべき」だと力説する。

「整理とは『分ける』こと。それが『解る』につながる。整理する方法には、図や表にする、規則性を見つける(規則性をつくる)、置き換える、などがある。喩え話は『置き換え』です」

喩え話が簡単にできるのは、頭の中が整理されているから。逆に言えば、人に説明するつもりで自分の頭を一度整理すれば、難しい話でもラクに覚えられると椋木さんは話す。

(澁谷高晴、永井 浩=撮影)