SDGsで利潤を生む魔法の杖は「イノベーション」

持続可能性を追求するためには、その事業が利潤を生み、その利潤を再投資するというダイナミズムを生み出さなければなりません。それこそが資本主義の本質であったはずです。そう、地球や社会の未来を危うくしたのは資本主義でしたが、資本主義はうまく使うと持続可能性を担保する有効な役割も果たしうるのです。

資本主義には、持続可能性の答えを出すこと以外にも、さまざまないい属性があります。まさに「魔法の杖」です。

では、この「魔法の杖」の本質とは何でしょうか?

シュンペーターは、それこそが「イノベーション」の力であると看破しました。イノベーションとは、人間の英知によって生産性、そして創造性を飛躍的に高める営みを指します。それによって、価値をケタ違いに高め、コストをケタ違いに低くすることが可能です。しかし、そんなに虫が良い話が本当にあるのでしょうか?

シュンペーターは、イノベーションを生み出すためには5つの切り口があると説きます。

商品、プロセス、市場、サプライチェーン、組織の5つです。それぞれの切り口で、これまでとは非連続な発想を持ち込むことによって、イノベーションが生み出されるというのです。

イノベーションは「技術革新」と訳されることが多いですが、これは明らかに誤訳です。「革新」は正しいのですが、「技術」だけにとらわれる必要はありません。

儲からないSDGsを儲かるものにするのは可能でしょうか。

写真=iStock.com/apomares
※写真はイメージです

それが難しくて、これまで放置されてきたとも言えます。これを解決するには、これまでのやり方やしくみを、抜本的に組み替えなければなりません。シュンペーターはそれを「創造的破壊」と呼びました。そのためには、従来の常識にとらわれない異次元の知恵と勇気が必要となります。

それこそがイノベーションの力です。

行き詰まったのは「利己的な欲望」の追求

資本主義が行き詰まってしまったのは、このイノベーションの力を、ひたすら人間の利己的な欲望の追求に注ぎ込んでしまったためです。社会課題という利他的な価値の創造にイノベーションの力を振り向けることができれば、今の成長の限界を突破することができるのではないでしょうか?

しかしこれを実行するのは難しく、きれいごとだけでは答えにはなりません。持続可能な未来を作り出すためには、イノベーションの力を復活させる必要があります。それこそが、今日、シュンペーターのイノベーション論が注目されている最大の理由です。

シュンペーターの価値を再発見したのは、ピーター・ドラッカーでした。

シュンペーターより26年後に同じオーストリアで生まれたドラッカーは、シュンペーターのイノベーション論に触発されて、最先端のマネジメント論を次々に生み出していきました。

そのドラッカーが提唱したのが「ソーシャル・イノベーション」です。イノベーションの力で社会課題の解決を目指すという思想です。

シュンペーターの思想はドラッカーに受け継がれ、100年後の今、まさに花開こうとしています。