ナイキ厚底シューズの爆発力と沈黙の2年3カ月
振り返れば、厚底旋風が起きたのは5年前の2017年夏のことだった。一般発売されるや、マラソンシーンを“ナイキ一色”に染めた。プロ・アマ問わず世界のランナーに「シューズ革命」をもたらした。
例えば、
・同年以降、箱根駅伝も同シューズが往路・復路全10区間の区間記録を更新。1kmあたり2~3秒もタイムが短縮している。
もちろん、その間、他社もただ指をくわえて見ていたわけではない。
アディダスは5本指カーボンプレートが搭載された「アディゼロ アディオス プロ」を、アシックスは走り方(ストライド型、ピッチ型)に着目した「METASPEED」シリーズを発売。その結果、2022年の箱根駅伝はアディダスを履いていた選手が前年4人から28人、アシックスが同0人から24人に急増した。
一方、ナイキは2021年の箱根駅伝で210人中201人(95.7%)という驚異的なシューズシェア率を残したが、それが154人(73.3%)に下落。厚底シューズを投入以来、初めてパイを奪われたかたちになった。
厚底市場は沸騰し、シューズのレベルはかつてないほどに高まる中、ナイキは“沈黙”を貫いてきたが、ここへきて2年3カ月ぶりに新モデルを出した。
キプチョゲ太鼓判、アルファフライ2とはどんな靴か
「アルファフライ2」について、プロダクトラインマネジャーを務めるエリオット・ヒースはこう話す。
「(2020年発表の)アルファフライを新しいレベルに引き上げました。最高のアスリートだけでなく、すべてのアスリートがマラソンでパーソナルベストを目指す、あるいはベストフォーマスを発揮できるようにフォーカスしています」
ターゲットは、プロやアスリートだけではない。市民ランナーなど一般人も含まれる。厚底市場の裾野をもっと広げ、普及させたい考えなのだろう。
主なバージョンアップは以下の3つだ。簡単に説明しよう。
まずはアッパー部分。通気性を高める部分と固める部分で編み方・折り方を調整した。ミッドソール(厚底)部分は踵の部分を幅広くしたことで安定性を高め、エネルギーリターンがさらによくなった。さらに、オフセット(踵と前足部の厚みの差)部分は、前回は4mmだったのが今回は8mmに。前足部を薄くしたことで、体重移動がスムーズになった。