甲子園で何度も優勝しているあの超強豪校も採用

ゼットと契約している選手たちの着こなしを見て、黙っていなかったのが他の野球用品メーカーと契約している選手たちだ。「BEAMSがデザインしたウエア、カッコいいな。俺にもちょうだい」。ゼット契約選手にねだることもあったという。

「グラウンドだけではなくて街中でも着れるようなアイテムや、野球とファッションのつながったものを楽しめるようなアイテムも含まれているので、これまでの野球ウエアとは明らかに違うと思いますね。グラウンドだけではなくてプライベートでも着られるように意識しています」(水尾さん)

そうしたコンセプトが功を奏して、実はおしゃれに敏感なお年頃の年齢である高校球児たちも、さっそくBEAMSデザインのアパレルを採用していく。どうせなら野球の練習時以外のプライベートの時間にも着ることができれば、一石二鳥ということなのだろう。

そうやって「ZETT by BEAMS DESIGN」はマーケットを広げていった。今なら、シンプルながらデザイン性の高いポロシャツ、流行のビッグシルエットのTシャツ、野球選手のイメージが薄いパーカーやハーフパンツ……それまでの野球用品店になかったアイテムは高校球児のハートをつかんだのだ。

写真提供=ZETT 

面白いのは、飛びついたのは球児などのプレーヤーだけではなかったということ。若い頃、都会的でスマートなビームスというブランドに憧れを抱いていた野球部の監督やコーチの心をもわしづかみした。そのため、近年はチーム単位・学校単位での注文も増えたという。

高校球児はファッションにお金と時間を費やす余裕がない。そのため、ファストファッションで十分と考えている人が増えているだけに、ビームスにとっても若い世代にブランドを認知してもらう絶好のチャンスとなったのだ。

現状、「ZETT by BEAMS DESIGN」は全国で大流行している、とまではいかないが、このたび甲子園で何度も優勝している超強豪校も採用した。そうした動きに敏感な球児たちの中で今後ますます注目度が高まっていくかもしれない。