「トマムに挑戦した時よりはリスクは少ない」
もちろんリスクがないわけではない。
インバウンドには間違いなく面白がられると思うが、大阪以外の日本人にどこまで評価されるか。また物珍しさで来館した大阪の人たちが今後もリピートするのか。そして何より、客室数436室。単体ホテルでは星野リゾートで最大というスケールである。
星野代表は「もちろんリスクはあるが」と前置きしながら「トマムに挑戦した時よりはリスクは少ない」ときっぱり言った。
トマムは再生が成功するまでに10年余りの年月がかかっている。
1000ヘクタールという超巨大施設の再生ゆえ、当初は客室数にレストランの席数が見合わず、従業員は客によく怒られたという。敷地が広すぎて社員同士の連携がとりにくかったり、冬以外の閑散期対策など課題は山積していた。全社員が参加する会議から生まれた「雲海テラス」というキラーコンテンツが生まれるまでは、長い試行錯誤があったのだ。
星野代表の発言は、そんなバブルの遺産ともいうべき北海道のスキーリゾートであるトマムの再生より、OMO7大阪は目指すゴールが近いという意味だろう。
2025年の大阪万博に向けて、ホテルがある西成周辺を大阪観光の目玉にするコンテンツも、トマムの雲海より、周辺にいくらでもあることが明確にわかっている。
それはOMOブランドの名物ともいえる、ホテルスタッフが案内する「ご近所アクティビティ」が教えてくれる。
一見では入りづらい串カツ屋を巡るものや、近所にある大阪木津卸売市場、大阪文化を学ぶツアーなどある。そのうちの「ほないこか、ツウな新世界さんぽ」というツアーに参加した。
新世界を歩くのは初体験。通天閣を見上げ、「西成モーニング」(朝から酒が飲めるモーニングセット)を出す店をのぞき、ヒョウ柄専門店で「ガオーッ」とポーズをとる。もちろん治安ははるかに良いけれど、ソウェトを歩いた時の興奮を思い出した。