星野リゾートは、今年4月、「OMO7(おもせぶん) 大阪 by 星野リゾート」を開業した。なぜ定評のある梅田や難波ではなく、日本最大のドヤ街のあるエリアにホテルを建てたのか。国内外のホテルを取材しているノンフィクション作家の山口由美さんがリポートする――。
JR新今宮駅降りてすぐのところに建つOMO7
筆者撮影

JR新今宮駅降りてすぐのところに建つOMO7

ドヤ街と通天閣に挟まれた星野リゾートの新ホテル

JR新今宮駅のホームに降り立つと、視界に飛び込んでくるのが広々とした緑の丘陵地と白亜のホテルだ。2022年4月に開業した「OMO7 大阪 by 星野リゾート」(大阪府大阪市浪速区)である。

OMO7大阪の後ろ(北側)には大阪の象徴、通天閣がそびえ、「新世界」という繁華街が続く。巨大な看板にビリケンさん、雑多でにぎやかで、大阪らしさの凝集したディープなエリアでもある。

線路を挟んで反対(南)側には、日雇い労働者が集まる日本最大のドヤ街が広がっている。「西成のあいりん地区」や「釜ヶ崎」などと呼ばれ、1960年代以降、何度となく暴動がおきた。「西成暴動」である。それゆえ、ホテルがある一帯は、親子連れや女性はあまり近寄らない場所だった。

星野リゾートの星野佳路代表は「長野の会社だから、よくわからなくて進出したんだろうと思ったかもしれませんね」と笑う。

軽井沢を本拠地にラグジュアリーホテルを展開してきた星野リゾート。大阪における初出店が、このOMO7大阪なのだ。

OMOは星野リゾートが展開する都市ホテルブランド。数字は提供するサービスの幅を表している。「7」はフルサービスホテルを意味し、一つの都市に1軒のみ。つまり星野リゾートの都市ホテルは今後、梅田や難波には開業しないことを意味している。宿泊代はシーズンや空き状況によって変化するが、1宿1室で6万1000円~となっている。

西成とニューヨークSOHOの共通点

星野代表は、開発を決断した理由のひとつが若い頃に過ごしたアメリカのニューヨークやシカゴからの発想だったと語る。

治安の良くない場所は家賃が安い。そこに若者やアーティストが集まり、イノベーティブなショップやレストランが開業し、街が活性化していく。

例えばニューヨークにはSOHOを筆頭に、そうして発展したところが多くある。サンフランシスコやオーストラリアのシドニーでも、治安の悪かった倉庫街がおしゃれなエリアに変貌した例がある。

実際、コロナ禍以前のインバウンドブームの頃、西成は外国人旅行者からすでに注目されていた。ドヤ街の簡易宿泊所は1泊1000~2000円程度の手頃な安宿として重宝されていた。彼らの需要を見込んで、こぎれいなゲストハウスやビジネスホテルに建て替えるところもあった。変化の兆しがあったところに星野リゾートが開業したのだ。

新世界には串カツをはじめとして、安くておいしい飲食店も多く、外国人が目をつけた理由は容易に理解できる。