外様だからこそ発見できた魅力

私がOMO7大阪の立地から思い出したのは、南アフリカのヨハネスブルグ郊外にある旧黒人居住区、ソウェトに滞在した時の興奮と感動だった。

西成暴動ならぬソウェト蜂起で知られる反アパルトヘイトの聖地は、日本のガイドブックには「治安が悪い」と強調されているだけで、若き日のネルソン・マンデラの自邸やワールドカップが開催された競技場があることなど、重要な情報は一切記載されていなかった。

だが、実際のソウェトは、たった1軒ながら立派なホテルが建ち、ガイドツアーもたくさんある。旅行者に人気の場所だった。

負の歴史を背負った土地ながら、同時に底抜けの明るさとパワーに満ちていて、南アフリカの真実を理解できた気がした。

ソウェトのシンボルである旧発電所は、塔の上からバンジージャンプが楽しめる。
筆者撮影
ソウェトのシンボルである旧発電所は、塔の上からバンジージャンプが楽しめる。

その経験から感じたのは、日本人は危険の香りがするものに対して過剰に拒否反応を示すということだ。だからガイドブックにはネガティブなことしか書いていない。OMO7大阪に対する反応もその延長線上にある。

そう考えると、外国人旅行者が西成を「発見」したことは納得がいくし、星野リゾートの挑戦もグローバルスタンダードからすれば、十分勝算があると私は確信する。

利便性が抜群にいいのに土地が安い

そもそも現在の西成は、労働者の高齢化もあり、10年以上暴動はおきていない。統計的に犯罪件数がとびぬけて高いこともない(大阪市の刑法犯認知件数トップは中央区の4261件、浪速区は1769件 令和2年度大阪府警調べ)。ソウェトや星野代表の原風景にある80年代のニューヨークやシカゴに比べるまでもなく、本当に治安が悪いわけではない。ただ、昼間から路上で飲んでいるおっちゃんがいたり、なんとなくヤバそうな雰囲気があるだけなのだ。

それでいながら、世界のヤバいエリアに共通する長所を持つ。つまり土地が安い。これが星野リゾートが進出を決断したもうひとつの理由である。

新今宮駅は4路線(JR大阪環状線、JR関西本線、南海本線、南海高野線)が乗り入れ、大阪メトロ御堂筋線「動物園前駅」が隣接するターミナル駅であり、利便性は東京であれば新宿駅や渋谷駅に匹敵する。関西国際空港へのアクセスは抜群にいいし、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにも行きやすい。それなのに土地が安い。

約1万4000平方メートルのホテルの敷地には、中山太陽堂(現クラブコスメチックス)の「クラブ洗粉」などを製造する工場があった。1976(昭和51)年に撤退した後、土地は大阪市の所有になった。市は、ここを地域活性の場として活用する企業を長年募集してきた。

そこに手を挙げたのが星野リゾートだった。土地の取得金額は18億1111万1111円と、大阪の繁華街と比べて、かなりの格安だった。