「SASUKE」をモチーフにしたテーマパークが続々とオープン
ディズニー作品がヒットすると、グッズも売れるように、「SASUKE」もグッズにゲーム、出版物へと商品化が広がっていった。世界的企業やハリウッド映画とのタイアップ事例も多い。さらに健康志向の高まりでフィットネス人口が増えていることが後押し、SASUKEブランドのアスレチックジム施設まで建設された。
あらゆる年齢層の誰もが楽しめるコンセプトで「ニンジャ・ウォリアー・アドベンチャー・パーク」として展開し、イギリスやイスラエルなど世界15カ所以上で続々とオープンしている。新型コロナウイルスの流行が収束に向かうなか、番組の世界観を楽しみながら運動できるパークの需要はますます高まっているという。
海外の放送や商品化で得た「SASUKE」の海外売上は、海外ビジネスセンター(海外事業)部門が計上する年間約30億円に含まれる。TBSホールディングス全体売上の約3500億円からみると微々たる数字にすぎないが、「SASUKE」は海外売上全体の重要な柱の1つとして位置づけられている。
「SASUKE」の海外売上についてTBSに取材したところ「20年近くにわたり収益を確保し続ける番組のひとつ」と回答があった。積み重ねたその売上規模は相当なものだろう。
エンターテインメント産業の本場であるアメリカで成功し、世界でも展開され、ブランド化も進む。アニメ作品では決して珍しいことではないが、日本の実写番組としては数えるほどしかない。
勝者を決めるではなく、挑戦者を応援する番組コンセプト
最後の3つ目の理由は、結果的に時代を先取りした番組コンセプトにある。今は価値観が多様化する時代。他人を蹴落とし、トップになることだけに重きが置かれていない。「SASUKE」はまさにこのコンセプトをもとに、当初から変わらずに脈々と続いている。
実際にコースをクリアする選手だけが注目されるわけではない。25年続く日本でも完全制覇者と言われるファイナルステージをクリアした人数は、約4000人いる挑戦者のうちたった4人だ。つまり、出場する選手一人ひとりが主役として成り立っている。挑戦することそのものに意味を見いだし、選手同士が助け合い、ファンも応援し、人気を博す。世界各国でも人気を集める要素はこれに尽きる。
勝者ひとりを決める勝ち抜きスタイルが一般的な海外では、挑戦者が完全制覇を目指すコンセプトの番組はユニークに映っただろう。ただ、それ以上にスポーツそのものに対して新たなイメージも作り上げたことも注目すべきポイントだ。